アメリカのドラマに見られる“教養”の意識の変化。

 アメリカのドラマは、主演の役者が年収ランキングトップになるような人気作品でも、普通に赤ワイングラスに白ワインが注がれていたり、その反対もよくある。

 そしてグラスを握りしめるように持つ。脚付きのグラスはなぜ脚が付いているのかと考えないのか(笑)。

 昔から、役者(良い生活しているだろうに)や取り巻きが“これはおかしい”と言わないのか幾度となく疑問に思ったが、細かいことに拘らないのがアメリカの“大きさ”なんだろうと受け止めるようにしていた。

 ヨーロッパのドラマではソレがなく、欧と米の大きな相違点。いわゆる文化的教養レベルの違いを感じる。

 どういったメッセージ性を持つのかワカラナイままだったが、5-7年前くらいはワインを普通のコップで飲んでみたり、刑事ドラマなのでキャラクターの所得や、常にグラスが揃っているはずもないことを考慮したとしても、いいお酒を紙コップに注ぎ乾杯するシーンなんかもみかけ違和感が増していた。

 ファッションもひたすらカジュアル方向に向いていたので、かしこまった雰囲気や、形式張ったものを嫌う傾向だったのか。音楽で言うとロックが流行った時代的な。

 一方英007シリーズは、常にMのデスクの後ろにはクリスタルのロックグラスとデキャンタがあった。それは映画だからだろうと思う人はそういう生活水準の中で育っただけで、実際に欧州では家もオフィスも来客用にクリスタルグラスを用意するのは当たり前。社会的地位が高くなればなるほどお酒も高価なものになっていくので必然。

 そのくらい大きな差があった欧と米だが、この2年ではまた男性が洒落た高品質な生地の仕立ての良いスーツにネクタイというシーンが増え、ワインにあったグラスがセットされるようになり、アメリカに教養領域を“整える”意識が見られる。或いは撮影現場に人種的多様性がもたらされた結果か。

 北欧ドラマをはじめとし、欧州発ドラマのレベルが上がりヒット作も増え、アメリカ人の意識が高まってきているのかもしれない。イギリス人俳優を主役に持ってくるケースも多く、数年前にジェニファー・ローレンスが「イギリス人男性ってマナーとかいろいろ知ってていいわよね」と言っていたことを想い出す。

 もしかすると日本の〜20年前のように、今後アメリカでテーブルマナー教室とかワインセミナーなどが流行るかもしれず、イアン・フレミング的な男性がモテる時代が来るかも知れない。