皮膚のフィルター

 今年初め、美容室で(笑)隣の意識高い系として振る舞う女性客が話している内容に驚いた。

 皮膚についたものは何でも吸収され、血管に入って身体全体に行き渡るらしい(笑)。だから全部オーガニックで天然のものじゃないとダメらしい。

 では、全身に食用オリーブオイルを塗ったら皮膚から毛細血管へ浸透し、たちまち高脂血症でおだぶつなのか(笑)。

 オイルマッサージなんて受けたら病院送りじゃないか。

 ごま油を山のように使う中華料理店のスタッフや、ガソリンスタンドで働く人達は中性脂肪やコレステロールが高かったりするのか。

 ベビーオイルの多くの主成分は、古い世代の意識高い系女性が嫌うミネラルオイル(石油由来)だが、塗り続けたら赤ちゃんは太るのか。仮にそうならオーガニックなココナッツオイルであれば太らないのか。

 皮膚には簡単な表現をすると親水性、親油性のフィルターがある。

 親水性フィルターは水を通すが、親油性(すなわち疎水性)フィルターで弾かれる。油分はその反対。

 だからプールに入ったからといって塩素を含んだ水分が吸収され、血中塩素濃度が上がったりはしない。同じくオイルマッサージを受けても高脂血症にはならない。

 粘膜は角質層がない分そのバリアが少ないため、「粘膜には使用しないでください」という注意書きをよく見かける。かといって粘膜に塗ったら何でもかんでも血管に入り込むかというとそうではない。

 更に分子量によるフィルターがある。網の目みたいなもの。血管内に入り込めるのは極めて小さい分子量のもの。精油とか。

 アロママッサージは、キャリアオイルという分子量の大きなオイルに、分子量の小さい精油を混ぜて身体に塗布する。

 キャリアオイルは血管内には入れず、有効成分である精油のみが吸収され効果・効能をもたらす。だから身体をオイル塗れにしても高脂血症にはならない。

 ※精油とは「油」とつくが実際は油ではなく、揮発性のものでアルコールに似ている。

 実際にアロママッサージ開始後数分で血中から精油成分は検出されるが、キャリアオイルは検出されない。

 ではオーガニックなものであれば、血管内に浸透しても良いかというとそうではなく、未精製のものは未知の成分が多々含まれているため、よりアレルギーを起こしやすい。言うまでもなく自然界にはフグやスズランのように毒を持つものも多々ある。

 ※いっそ精製度の高い混じりっけなしのミネラルオイルの方がはるかに安全だったりする。

 皮膚のフィルターは万能なのかというとそうではない。石けんで洗い続けたら皮脂膜がなくなり肌バリアが低下する。同様に日本の水道水で洗い続けたら塩素で荒れる。

 肌の表面(角質)が痛むことと、吸収され血管内に入り込み全身を巡ることとは違うので、信仰よりもまずは科学をすすめたい。