義務教育のプログラミング的思考とは。エクセルで考える。その3。

 なぜリストラが生じるのか。をエクセルを使って(笑)考えていく。

 文字列よりも数字で処理した方がイイ理由は他にもある。

 前回の例では、

9「超満足」 8「スゲー満足」 7「結構満足」 6「割と満足」 5「まーまー」 4「ピンとこない」3「正直もう買わない」 2「ぶっちゃけゴミ」 1「ここだけの話刺客を送ったから帰り道気をつけろ」

という具合に数字を割り振った。これを文字列のまま処理すると、

 IF(感想セル="スゲー満足", "🎁", "")

となり、感想セルが「スゲー満足」と正しく入力されている時にしか正常に機能しない。

 スゲ満足

 スゲェ満足

 スゴク満足

 スゲ-満足

 スゲーマンゾク

はいずれも偽となり「🎁」は表示されない。

 「コンピューターって頭悪いんだね」と思わずに「言われた通り入力できない人がいるんだね」と受け止めた方が順行。

 指定通りの言葉(文字)を使わず自分の言葉・表現を用いるのは男性に多い。素直に応じるのが何か能がない気がするのか、反抗することで自己主張する中学生的な思考なのか、はたまた指示(仕様)の意味がワカラナイのか(笑)。

 「意味通じるじゃん」的な発想はダメ。紙とペンなら担当者(人間)が理解できれば良いが、エクセルやデータベースへの入力は、その後の作業を自動化するためにあるので、ヒトに通じるか否かは何も関係なく、機械に正しく命令を与え実行させることが人間の仕事

 発音が悪くてSiriに通じないじゃそもそも音声認識を使えなのと同じ。

 データ入力とは1文字も間違えてはならず、特にプログラミングの世界では半角・全角、平仮名・カタカナ、大文字・小文字全て区別する。

 そこで現場と開発者のどちらが対応するかという話になる。一般的に開発側が使い手に配慮することが多く、実際に入力作業を行う担当者の性格が几帳面であることを確定できない限り、可能な限り入力ミスを防ぐように設計した方が良い。となる。

 と言うことから、1 2 3 と数字にすれば沢山の文字列を入力させるよりはミスが減る。更に、日本語が得意でない外国人でも入力作業できる(後述)。

 しかし、それでも全角数字で入力するアホ(笑)がいれば、社員教育のコスト、開発側に調整させるコストを考えたらリストラの検討が始まる。定年退職まで続くのであれば決断は早い方がいい。

 が、実際にエクセルを触っている人は思ったかもしれない。「あれっ、全角数字で入力してもちゃんと半角に変換される!」と。その通りで、一般人寄りのソフトウェアほど素人が扱う前提でオモテナシ機能が実装されている。そのせいで勝手に文字が変換されるという問題もある。

 ソレを「開発者が使い手に配慮すればいいってことね」と片付けるべきじゃない。

 システムの開発とは、注文して納品されるものなので、本来は注文してない機能は実装されない。住所等の番地は全角数字で記録したいクライアントもいるから。

 弁護士のところに離婚の相談に行ったついでに店の万引き犯を訴える相談はできないのと同じ。

 では今、紙と鉛筆でアンケートの集計を行い、営業時間外にスタッフ総出で作業しているとする。

 「残業代出ますよね?」「おー、考えとく」みたいなやり取りから、いざ給与明細を見たら残業代はナイことに気付いたスタッフらがストライキに出た。そこで店長は「じゃぁそろそろエクセルを導入するか」と考え、便利になることと引き換えに「エクセルを購入する」というコストが発生する。

 「そんなもん必要経費だろう」と言えば確かにそうだ。

 しかし前稿までで、紙と鉛筆の現場にエクセルが何をもたらしたかを考えたら、何人分ものスタッフの残業代を削減できるだけでなく、スタッフ自体を減らせるかもしれない。

 という雇われ側にとって都合の悪い話になると「そもそもアンケートって重要なの?」と言い出す人がいる。ではアンケートじゃなくて物販(電話)の注文明細だったらどうだろう。電話でオーダーを受けたらソレを書き出す(エクセルに入力する)必要がある。

 名前を漢字で入力するスタッフもいれば、平仮名・片仮名で入力するスタッフもいるし、聞き取れずに全く違う名前を入力するスタッフもいる。住所の番地を全角数字・半角数字・漢数字で入れるスタッフもいる。その結果、常連客が毎回初めてと見なされ「いつも買ってるじゃないか」と怒らせてみたりする。

 それを毎日のように注意し続けると、「電話注文は廃止してWEB注文にすればイイんじゃない?」と言い出す人がいる。裏を返せば、自分の能力を保証できないから機械に任せようという発想。

 では「時代も時代だし、ECに切り替えるか」となっても、かといって自分達でシステムは作れないから、楽天市場やYahoo!ショッピングに出店する。注文のCSV一括出力機能などを使えば、これらの作業はほとんどなくなる。その代わりに出店コストがかかる。

 便利になることと引き換えにその代金を支払うの繰り返し。

 しかし、中小企業や個人商店レベルの店舗では、先日書いたような間違いが非常にしばしば起こる。「2個と4個は間違えないだろう普通は」と思うのが平均以上層だと思うが、実際の現場では、これを店長がガミガミと注意すると「いや、この画面見辛いんですよホラ」という話になっていたりする。

 日本でイチバン普及したショッピングモールのシステムでさえ使いづらいとなると、いよいよオリジナルシステムを発注するしかない。2個と4個を見間違うスタッフのために。

 そこでふと、「何で他の店舗のスタッフはちゃんとできるのにキミはできないんだね」という社会人偏差値の話になる。

 少し前に戻って、「日本語が得意でない外国人でも入力作業できる」と書いた。「数字1桁でさえそんなにミスが起きることを前提に雇用しなきゃいけないんだったら、もっと賃金の安いスタッフを雇う」と考える事業主が増える。実際に単純労働の現場ではそうなっている。

 これは実店舗で言えば「レジの打ち間違いが多いからバーコード導入しようよ」→「バーコードなら日本人じゃなくてもできるし」と同じ流れ。

 そこでアンケートの話に戻って「数字は半角で」と言っているのに全角で入力するスタッフのために、ソフトウェアやシステムの開発会社に「数字を全角で入力しても半角に自動変換されるように作ってもらえませんか」と発注するか否か。

 経営者はイチイチ予算を全従業員に見せて説明しないから、ここでリストラの話が出ると「今までこんなに尽くしてきたのに」というお涙系の流れになる。

 しかし業者からの見積書を開示し(*A)、匿名で多数決を採れば「その費用を私の家賃負担に回してほしい」「オレの時給上げて欲しい」と考える人の方が多く、ほとんどの場合「無駄な出費」と見なされる。すなわち“落ちこぼれ”に対し「半角で数字を打つ練習・努力をさせるべきだ」という考え方。

 (*A)中間管理職が省かれ、経営者直結の組織構造になればなるほどそうなっていく。

 ココでは、「半角で」と言われているのに全角で入力するスタッフの後始末をしているスタッフがいることを考える必要がある。誰かのミスを補填している人は、その分自分の給与を上げて欲しいのは当然。むしろ「1人解雇して私に1.5倍払ってくれない?」と内心思ってる人もいるだろう。

 これが私が良く使う「社会人偏差値」であり、「誰でもできるでしょ」と誰もが思うことにはお金をかけようとせず、その原因を排除しようとする。

 HTMLを書いた事のある人は、表のラベルは文字列で、CGI等に渡す値は数値というページを度々見ているだろう。

 例えば都道府県や性別などを選ぶプルダウンメニューは、

 ↑こんな感じになっていて、「option value="n"」で渡される数字がデータベース(一般的にSQLを使う)に格納され、「7以上を抽出しモニター参加依頼メールを送る」「3以下を抽出し、改善のための電話アンケートのお願いメールを送る」と自動化されていく。

 ココまで来るとヒトは何も入力しないのでミスが起きない。2と4を見間違えるということもない(ヒトが見る必要もない)。言い換えると「ミスを起こさせない設計」ではあるんだが、作り手が賢くなっているだけで、使い手は何も変わらないから相対価値(すなわち偏差値)が下がる。

 誰かが賢くなることで他の誰かが要らなくなる流れ。

 電話アンケート+紙とペン → 電話アンケート+エクセル → 文字列から数値へ → WEB+データベースまでで、必要なスタッフは大凡10人→2人(本当は1人で十分)という変化が生じる。では8人には何をしてもらおうか。物販なら倉庫・梱包業務か、はたまた掃除か。

 そうこうしているうちに音声認識技術のレベルがあがり、電話で喋った内容がそのままデータ化され文字として格納されるようになるだろう。

 昔は電話オペレーターが全て人力手作業でやっていたが、90年代からCTI技術が発達し、オペレーターにつながるまでの間、プッシュボタンで客番や電話番号などを入力してもうことで、予めデータベース検索を行い顧客情報を表示するということが可能になった。

/*
 電話のプッシュボタンとはボタンの数字がデジタル信号として送られるわけではなく、割り当てられた「ピッポッパ」という音の周波数を聞き取っているだけ。すなわち音声認識。だから私みたいな耳の持ち主は「ピッポッパ」の音を聴けばどのボタンを押したかがわかる、またボタンを押さなくてもトーンジェネレーターなどで同じ周波数を受話器のマイクに向かって放てば電話をかけられ、相手側のCTIを操作することができる。
*/

 という流れで自動化(同時にリストラ)されていく。

 よって能力とは相場(偏差値)で値打ち=対価が決まると言える。だから自分はこのままでいいと思っていても、他の誰かが勉強して優秀になると、自分はこのままでいられなくなる(給与が下がる、仕事な無くなる)可能性が常にあるということ。

 「プログラミング的思考」とは結局のところ生産性を高めるためのものであり、生産性が高まる=人手が要らなくなる=少子高齢化に対応するという前提で考える必要がある。というのもまた全体理解、構造理解の話なので、全ては循環している。