多分(動作性知能)境界域。

 ある大手ブランドの女性スタッフ(20代後半)の事例。

 私はデパートで買い回りをし、当該ブランドの同業種の他のブランドの紙袋(小物だったのでB5サイズくらいのもの)を3つ持っていた。当該店舗が最後の買い物だったので、「この3つも一緒にまとめて入れてください」と頼んだところ、意味は1回で通じた。

 デパートの大きな紙袋を用意して、そこに1(当該店舗分)+3(他の店舗分)つの紙袋を入れるというデパートではよくある作業。

 が、ココで問題が起きた。

 ウェクスラー(III)で言うところの動作性知能境界域かと思われる。

 主に知覚推理の一部領域および処理速度の極端な遅さ。会話自体には特に問題なく、注文を聞いて支払いを済ませ1つの商品を渡すだけならちゃんとした社員教育を受けた勤勉な販売員に見える。一見。

 恐らく日本人女性に多い自己肯定感の低さから来る、謙虚さや謙遜を超え自分で何も決められない“難あり”の性格。客の買い物袋に優先順位を付けられず、「重ねて入れるわけにはいかない」(下になるブランドに失礼)という気持ちと迷いが強すぎて、全ての袋を全部横一列(対等、平等)にするしかないと考えているのが伝わってくる。袋の並べ方・入れ方を見てるだけで。

 しかしその場合は横に広い紙袋を用意するならまだわかるが、幼稚園のちびっ子がすっぽり入りそうな縦に深い巨大な紙袋を用意した時点で、気の迷いと知覚推理(空間認識)能力の低さからどうにも手が付けられない程の深みにはまっているのが見て取れる。

 で結局本人は、自分で用意したその縦に深いバケモンのような紙袋を見つめて途方に暮れ、私が「さっき持っていた紙袋2つに分けてもいいですし、重ねてもいいですよ」と言うまで試行錯誤(と言うよりほとんど硬直)が続いた。

 支払いを済ませ、袋選びと袋詰めだけに15分くらい。その間他のスタッフのサポートはなし。

 「IQが高い」=難しいことが解ると思っている人が多いが、本来ウェクスラーなどの知能検査で問うIQとはそうではなく、日常生活に必要とされる能力の測定が主。袋にまとめて入れるだけの作業に15分かかれば、それは日常生活(業務)に差し支える(すなわちIQが低い)と判断される。

 周りがサポートすれば手がかかる=コストとなりリストラ対象となる点でも生活に支障を来す。

 WAIS-IVを受けた際、記号探しや符号、絵の末梢(いずれも処理速度)が終わった時に「集中すれば簡単ですね」と言ったところ、公認心理師の女性から「これが難しい(大変)という方も多く、中には最初の1つ目で手が止まって呆然としそのまま時間切れになる人もいます」と聞いたことを思いだした。そのタイプの人だろう。当該スタッフは。

 空間認識能力と処理速度とは別に、優先順位(例えば重いものが下とか)を付けられず“決められない”性格もなかなか難しい。最近は良く分からない意識高い系がはびこり、何をやってもケチを付けられる社会への恐怖心もどこか感じる。もしかするとそういった客との日常的な接触が原因で鬱由来の空間認識能力の低下及び処理速度の遅さかもしれない。

 欧米なら、例えば白人と黒人の荷物があり、黒人の荷物の上に白人の荷物を積んだら、それがただの受付順であったとしてもイチイチ「それって」と言い出す人がいることに疲れ果て、「とりあえず黒人を優先しておけば間違いない」とする層も一定数いる。当然に担当者はストレスが大きい。

 小難しい社会だなと思う。