「「学校は必要か問題」才能ある人の意見が参考にならない理由/ひろゆき | 日刊SPA!」

 この問題は、発信者と受け手の層が噛み合っていないことで生じる。

 成功者やリーダーが「●●だ」と発信してそうだそうだと最初かつ強く反応するのはなぜかサラリーマン。成功者やリーダーとの思考的共通点を見いだし、自己肯定感を高める効果と、発言力のないサラリーマンが自分自身の主張を正当化する後ろ盾を得る効果とある。その心理を上手く利用した政治家がドナルド・トランプ。

 しかし実際には『●●派と▲▲派。●●と▲▲の方が近く、●●派と▲▲派の方が近い』が現実で、成功者同士、リーダー同士が似ていて、それぞれを支持する人達同士の方が似ている。

 例えばドナルド・トランプは大金持ちであり、彼と彼の支持層(いわゆる田舎の単純労働者)の共通点は実際のところナイに等しく、現実社会では彼こそが“エスタブリッシュメント”そのものなんだが、なぜか支持層は自分達と同じ側の人間、その代弁者として仲間意識を持っていたりする。

 同じように、ウォーレン・バフェットが朝食をマクドナルドで済ませていることに共感しても、朝食をマクドナルドで済ませている人口から逆算すると、統計的には成功しない可能性の方が高いと出る。要は何の関係もない。

 大学中退の大富豪は少なくないが、例えばザッカーバーグのようにハーバード大在学中にFacebookを立ち上げたら、そりゃ中退するだろう。楽しいしやり甲斐があるから。そして儲かるから、大学よりももっと多くのことを学べる。

 早い話、富によって選択肢が拡がる

 この「大学よりももっと多くのこと」を学ぶ環境を得た時点で成功者であり、ほとんど人はソレを手にしない。

 そのまま成功したからこそ「大学中退の成功者」としてアンチ学歴派の支持と主張の元となりうるが、失敗していれば「ハーバード大まで行ったんだからちゃんと卒業すれば良かったのに」とただのドロップアウト組として扱われる。

 遺伝か努力かの話と同じで、成果と失敗はセットで背負うもの

 一方で、マット・デイモンはハリウッドスターとして何代生まれ変わっても一生食べていけるだけの大成功を収めたが、「ハーバード大を中退するんじゃんかった」と発言している。恐らく俳優という不安定な職業柄、何か形として持っておきたいという気持ちもあるだろう。ザッカーバーグやスティーブ・ジョブズらのように事業で成功していればまた見解は変わっていたかもしれない。要は「世間の目」というやつ。

 ザラの創業者かつ常に世界の大富豪ランキングに名を連ねているアマンシオ・オルテガは中卒だが、仮に彼が「大学は意味がない」と言ったとしても、サラリーマンには何も関係ない

 サラリーマンで生きると決めたからには間違いなく大学を卒業した方が良い。

 記事にある生涯年収の差ももちろんだし、企業の面接官というのは実際はただの雇われ従業員であり、面接を受ける側と大差ない。その「普通」側の人が能力とか才能とか知能とかを精確に見抜けると期待する方が確率的には間違いであり、結局のところは試験の結果や学歴、資格などわかりやすい指標に頼ることになる。

 ※もう少し本質的な統計データが出回れば、一流大を冴えない成績で卒業するより、2流大であっても良い成績で卒業する方が役に立つだろう。サラリーマンは勤勉さの方が重要だから。

 同様の問題として、この20年間ITベンチャーを立ち上げ儲かり始めた社長達から、「優秀なプログラマーを雇いたいのですが、紹介を通じて会っても優秀かどうか全くわかりません」という悩みを非常にしばしば聞いた。当然プログラミングのプの字もワカラナイ社長はプログラミングの能力を判定することができない。よって、大学や資格、職歴、受賞歴などから判定するしかない。

 ということから、サラリーマンほど使える看板(学歴、資格、職歴、賞歴など)は全部揃えて掲げた方が良い。

 誰かに能力を判定してもらって給料をもらおうとしている以上、これは当たり前でしかない。自分が何に使えるかの仕様書(カタログ、パンフレット)を準備するようなもの。

 アメックスのセンチュリオンと同じで、「そんなもんで店員の反応が変わるなんて二流店だ」と主張する人がいるが、店員・店長が何の手がかりもなく人を見抜く目があると考える方が不自然であり、もし自信があるならばそれこそ自信過剰(ダニングクルーガー効果)。素直に世界で認められている指標を取り入れる方が合理的だし謙虚。アメックスから極一握りの会員に送られるインビテーションを受け取り、その高額な年会費を払える人物というデータは、見た目で判断するよりも遙かに多くの経済的背景を反映しているのだから。

 結論としては、「学歴なんて意味ない」のは成功するために生まれてきた人達の話であり、サラリーマンが鵜呑みにすべき話じゃない。