高額納税者がぶら下がり健康器化している日本の納税格差。

 最近、財務省の「所得税の限界税率ブラケット別納税者(又は申告書)数割合の国際比較」という資料を見た。

 ※所得税だから住民税や消費税、法人税などは含まない。


我が国の所得税の納税者においては、最低税率(5%)が適用される納税者が約6割を占め、8割強の 納税者が適用税率10%以下。

 大丈夫なのか日本。83%の労働者は税率10%以下。これまで40〜50%くらいで見積もっていた。

 アメリカ、イギリス、フランスと比べ、納税という国民の義務において、ほとんど貢献していない人と、貢献している人の差が極めて大きい。すなわち高額納税者にぶら下がっている人の割合が多い国ということ。言い換えると日本の高額納税者は扶養負担が大きいということ。

 そこで、今後頻繁に使うことになるだろう資料として、各階級(所得税率区分)ごとの税収を逆算してまとめた。

 非常にしばしば「アメリカでは富の半分を上位2%(最近は1%)が握っている」と表現されるが、表の通り日本の納税は上位約2.5%が半分を担っていることがわかる。


 この表は下記の手順で作成した。

 冒頭の資料が平成30年度とあったので、労働人口所得税収(19.9兆円)も平成30年度の数字を用いた。所得税率は平成27年度以降現在も適用されているものを適用した。

 また、冒頭の資料の下部表から、税率10%以下層が83%かつ「最低税率(5%)が適用される納税者が約6割」という表記に基づき、所得税率5%層を労働人口の60%、10%層を23%とし、同資料の上部グラフから目分量で税率20%、23%、30%、40%、45%層の労働人口割合を定めた。

 次に、各税率階級の平均所得(表では「課税所得」=各種所得控除(*A)後の金額)を入力し、それに区分労働人口を乗じた額を合計所得(税引前)とした。この合計所得に対象税率を乗じ「控除前税収」を算出。そして各階級の控除額×労働人口を差し引いた額を「控除(*B)後税収」とした。

 ※この控除(*B)は税額控除なので、課税所得×税率−控除額で算出される。参考までに、所得控除(*A)(基礎控除38万円[当時は一律]や扶養控除など)の場合は先に控除してから税率を乗じる。

 最後に税収合計が19.9兆円になるよう各階級の課税所得(推定平均所得)を調整した。


 日本は「中間層が厚い」(≒社会を支えている)とされてきた。表の通り税率20%層(課税所得3,300,000円 から 6,949,000円まで)の控除前税収(=納税前)が最も大きいが、控除後の税収(=実際の納税)で見るとそうでもない。

 また、最高税率の対象者は「年収4,000万円以上」で中央値・平均値が取れないため、小さく見積もって7,100万円とした。よって最高税率層の税収はもっと大きいだろう。

 ※2005年頃まで続いた個人所得税の高額納税額公示制度(今思えば危険極まりない(笑))に基づき毎年発行されていたいわゆる「長者番付」で、私は年収2億5千万円の時点で数百番台前半だったことから、偏差値観測で17万人の中央値は7,000万円あたりではないかと推定した。その後日本企業も経営陣への報酬が上がっていったので、平成30年度は1億円あたりかもしれない。よって最高税率層の税収を高く見積もれば、その他の層を下げて計算する必要があり、納税格差は更に開く。


 表のイチバン右側の「一人当たりの重み」とは、最も低い税率層の1人が「1」となるよう計算した結果、最高税率層の1人とは1:911の差があることを意味する。

 資本主義経済下にある日本国を「株式会社日本」と見立てた場合、これは大凡出資比率に値し、「1人当たりの重み」は議決権(≒発言権)に例えた場合の目安として用いることができる値。

 或いは「1」を「1人前」としてカウントすれば、高額納税者は911人前。

 よって真の対等を望むのであれば、まずはフラットタックス制度を支持する。

 ※税率を揃えても(フラット化しても)、高収入であればそれだけ納める税金は大きくなるので(消費税と同じ)本質的には対等にはならないが、税金として労働時間を捧げる割合は等しくなり、何よりも低所得層の「ぶら下がり率」(すなわち依存度)を改善することができる。要は税金を通じて存在する「扶養者」「被扶養者」の関係性を多少なりとも是正できるということであり、それを望まなければ格差を受け入れるしかないということになる。


 今後、こういった社会の実態をベースに、対等・平等とは何か、公平とは何かを考察していく次第。