「強制を嫌う仏国民が「ワクチン義務化支持」のなぜ | ヨーロッパ | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース」

フランス人から夏のバカンスを取り上げたら、うつ病が急増するといわれている。そのフランスではコロナ禍のロックダウンにより精神的に追い込まれたことで、家庭内暴力(DV)が急増。昨年3月時点の内務省が把握した仏全土のDV事例は878件だったのが、今年3月には1598件と大幅に増加し、児童への性的虐待はこの1年間で2倍に増加した。

ということからも、「なくてはならないもの」は人によって異なり、先月書いたエルメスの件もそうなのかなと思う。

 フランスはまだ太陽の光を拝めるものの、北欧諸国の人は慢性的にビタミンDが不足するので、“バカンス”はただの贅沢ではない。

 「人間が生命を維持するために必要なもの」と言えば水と食料だが、その調達に限定しなければならないほど切羽詰まってない中で行動制限を行う場合、○○がないとDVが増えるとか、△△がないと児童虐待が増えるとか、□□がないと自殺が増えるとか、●●がないと鬱が増えるとか、何かのメリットと引き換えに深刻な問題が生じる場合があり、注意深く観察する必要がある。

 例えば海外ドラマで多いのは、アルコール中毒の親を持つ子供は、できれば親にお酒を飲んで欲しくないが、お酒があれば自分が殴られずに済むからお酒を調達してくるといったシーンが非常にしばしば登場する。

 ヒトは気付いていないだけで、■■がないと機嫌が悪くなる、八つ当たりするという人も非常に多い。周囲からすれば迷惑極まりなく、自らの生産性が下がるに留まらず、その空間にいるだけで心身共に消耗していくのだとすれば、対象を排除するか■■を与えるしかないという2択になることが多い。他に選択肢があったとしても、皆時間に追われているので早く解決したいから手っ取り早い方を選ぼうとする。

社会党政権で外相や保健相を務めたベルナール・クシュネル氏(国境なき医師団の創設者の1人)は、政府のワクチン義務化を擁護している。彼は「予防接種は個人的な問題ではない」「それを拒否するのは裏切りだ。法律が必要」「予防接種は公衆衛生維持の必要条件」と述べた。

 私もそう思う。社会の一員としての責務。強制できないのであれば、ワクチンを接種しない場合のコロナウイルス罹患時の治療費は保険適用外とすれば選択権は奪わずフェアだろう。多くの人は納入保険料が足りていないし、医療費の財源に税金が投入されている(約39%)から。

 いずれにせよ一向に収まりそうもないので、早かれ遅かれ世界的に義務化されるだろうと思っている。