赤い靴底と赤いビン底。

 赤いきつねと緑のたぬきじゃなくて。

 もはや赤い靴底は眺めるものではなくなり、履くものと化した。今年から。

 ルブタンメンズは北斗の拳のジャギのイボイボ系だと思っていたがそうじゃないものもあることを今更知り(*A)、約17年間のテストーニ生活からサクッと乗り換えた。私の足で木型を作ったかのようにフィット。

(*A)私の周りにも、実際そうだと思っていたという男性も一定数居るので、アンチイボイボ派をすくい上げるマーケティングも必要なんじゃないか。余計なお世話だが。

 買ったその日から足に馴染み、歩き回っても靴擦れができることもなく、レースアップで締め上げなくともパカパカとかかとが浮くこともない。

 この靴を履いてヴィトンに行ったら「芸術作品のようなお靴ですね」と興味津々だったので靴底を見せたら納得していた。

 スッと足が入り、どこも詰まることもなければ浮くこともない私の足と靴の相性を見て「うらやましい」とつぶやいたヴィトンの女性スタッフ。その昔ベルルッティでも同じことを言われたが、日本人の足にフランスの靴はなかなか形が合わないらしい。かといって日本人向けの型で作ってしまうとブランドのフォルムが変わってしまうという悩ましい問題がある。

 ワインレッドのスェードのDandelion。ダンディーなライオンじゃなくてタンポポ。

 決め手となったのは横から見たシルエットの美しさ。

 アストンのDB11ヴォランテのようなエレガントさと色気がある。

 「エレガントさと色気の両立」というテーマは、日本人がイチバン下手な領域と言っていいだろう。日本人がエレガントさを求めると冠婚葬祭フォーマル側に偏り、色気を求めるとストリップクラブの衣装のようになりがち。言ってみれば「NHKかポンギか」的な。

 が、「気品溢れるセクシーさ」は実在する。ファッション界に留まらず欧州におけるパリとロンドンの文化的融合がまさにソレ。

 裏張りのタイミングについては争い(笑)がある。ルブタンの赤い靴底が剥げる前に、すなわち買ってすぐリフォームサロンに直行すべきだ派と、靴底が足に馴染む前に人工的なものを貼らない方が良いというフィット感重視派といる。

 私はルブタンブティックの女性スタッフのススメに従い、そこそこ歩いてからデパートの靴リフォームサロンに持ち込んだ(その日のうちに完了)。

 フランス本国にはルブタンロゴ入りラバーの用意があるらしいが、日本にはないそうなので、リフォームサロンで「オススメは?」と尋ね、“ミラー”というタイプを選んだ。パッと見気付かないくらい。

 元々よほどすすめられない限り何も貼らないタイプだが、ルブタンでは「貼った方がイイ」と断言されたので素直に従った。

 ちなみにリフォームサロンの女性は赤い靴底が削れる前=すぐに貼った方が良い派だった。

 そして最近お気に入りのシャンパン。

 赤いビン底がトレードマークのルグラ。

 デパートのお酒売り場で、女性ソムリエから「オススメしたいシャンパンがあります!」と奥に連れていかれ出てきたのがコレ。

 ルブタン公式じゃないんだが、暗黙の公認化しているらしい。

 ブラン・ド・ブランのシャンパーニュにしては高くない。繊細でちょっとツンとした味わいで現代的。かといってドライ過ぎず。

 公式じゃないのでザ・ルブタンレッドではなく、赤坂時代からの付き合いであるガラクターズのナガイはビン底を見るなり「チアノーゼレッド」と表現したことが興味深い(笑)。血中酸素濃度低め的な。


 それにしても雨の日用に買ったマイケル・コースのスニーカーよりも革底のルブタンのローファーの方が滑らないとは(笑)。今年イチバン驚いたこと。

 「靴底の科学」に日本企業が本質的に向いている“点”ビジネス領域があるように思える。エレガントでセクシーなデザインは全くできないが、靴底の素材作りだけは任せて的な。