サプリなんて何の意味もない?

 先月、美容室(笑)で聞こえてきた話。

 30代の女性客で、「サプリなんて何の意味もない」に始まって「●●なんて便秘になったし」「■■は下痢したし」と続いた。

 ※「何の意味もない」派の中には、「胃酸で溶けてなくなるから腸まで届かない」という古い考えの人もいる。今は胃酸で溶けないカプセルが一般化しているし、胃酸で溶けると意味がないなら食事も意味がない。

 便秘になった、下痢したということは、成分が腸管などから吸収され人体に作用したということ。すなわち「意味がある」ことを意味する。

 この「意味」とは、本人が期待した作用に限らない。薬やワクチンに「副作用」「副反応」という期待しない別の作用が生じるのと同じ。

 人間の身体は複雑で、例えばアドレナリンを打てば交感神経が優位となり、身体は強くなるが眠れなくなったり消化不良を起こしたり便秘になったりする。

 一方アセチルコリンを打てば副交感神経が優位となり、身体は休まり、胃腸の働きは増すが、眠くなったりする。

 マクロ社会と同じ。限られた財源の中で何かを良くしようとすると他が手薄になったりする。

 普段と異なる栄養素を摂取すると、腸内細菌叢が変化しやすい。「偏った食事はダメ」と言われるのは、特定の食物(またはそこから生じるゴミ)を餌に繁殖している菌に支配されるからということもあり、腸内細菌の移植を行うと鬱が治ったり、知能が高まったりするというデータもあるほど。

 海外に行って便秘や下痢する人が多いのは食べ物や水が変わることが原因の1つで、しばらくすると落ち着くのは入れ替わった腸内細菌叢が安定するからだと考えられる。

 ということから、サプリで便秘・下痢という反応は、ちゃんと作用している証拠だと言える。期待した効果と違っただけ。

 例えば、「運動したら筋肉痛になった」から意味がないわけじゃない。普段使っていない筋肉を使った証。言い換えると、普段同じような動きしかしてないということ。

 同様に、「引っ越したら成績が下がった」から意味がないわけじゃない。普段と違う環境に適応・順応するために時間や精神的な消耗があるから。言い換えるとこれまで刺激のない(=頭を使わない)生活を送っていたということ。

 結晶性知能は積み重ねによるものだが、流動性知能は新規の演算を行うものなので、環境変化による負担は脳の運動になる。

 受け止め方が短絡的というか単細胞(笑)だと、意味(ひいては価値)を見いだせない。そしてアレも無駄コレも無駄という考え方に支配され、最終的にはその思考が無駄ということになる。