オールドマネー。ホンモノの時代か。

 ファッション業界で、この数ヶ月非常にしばしば「オールドマネー」というキーワードを見聞きする。

 直訳すると「古いお金」だが、先祖から引き継いだ財産すなわち親の代からお金持ちという意味の言葉。

 ファッションカテゴリで使われる場合、グレート・ギャツビーで言うとブキャナン家のような生粋のお金持ちファッションを指す。

 古典的なところでは、オックスフォードまたはケンブリッジなどの名門大出で、知性と育ちに裏付けられたファッション。言葉もオックスブリッジアクセントで的な。

 ウマで言う「サラブレット」が近い言葉か。

 それに対しギャツビーは今で言えば「ニューリッチ」で、“成り上がり”と言うとどこか安っぽいが、常に時代は新陳代謝を繰り返しているから、どっちがイイというわけでもなく。

 私はサラリーマンの家で育ったので実質ニューリッチ側だが、他人からは貴族だ王子だ伯爵だ(イングヴェイじゃない(笑))とオールドマネー側のイメージを持たれている。堅いファッションのせいもあるだろう。

 色使いなどから先進的な印象を持つ人もいるが、イマドキ上着なしでは女性と食事しない(できない)という希に見る堅物(笑)で、3ピースにネクタイ+懐中時計とか、カマーバンドに蝶ネクタイがユニフォームと言っていいほど。

 ということからオールドマネーファッションの流行は、私にとっては都合の良い流れ。

 アメリカはドナルド・トランプ政権時代に、「エスタブリッシュメント」(支配階級、特権階級)を毛嫌する流れが一瞬生じ、それ以降ロックな方向に向かいそうな気配がありながら、なぜにここにきてファッションという若者へのメッセージ性の強い業界で“オールドマネー”がもてはやされるのか。

 非常に興味深い。

 私が思うに、本物を求める時代。

 SNSの虚像の時代が10年ちょっと続き、皆が飽きてうんざりしてきたところにホンモノを求める流れが生じたのならば必然だろう。

 SNSは言ったもん勝ち、やったもん勝ちの世界で、フタを開けてみたら中身も実力も才能もないというまがい物がほとんど。そんな中で頭1個出たりしようものなら勝ち組だと勘違いしやすいものだが、低い偏差値集団の中で頭1個出ても平均くらいでしかない。

 そういうのに世間は疲れている気がする。

 というわけで、これからは淘汰の時代なのかなと思う。ホンモノを求めたらニセモノが排除されるから。

 同時にスーツはこのままテーラーでいこうと思った次第。プレタポルテにはプレタポルテの良さがあるが、高級であっても既製服は既製服。デザインや実用性面でいろんな要素(多様性)を取り込み過ぎて、私には無駄が多くなっている。

 シャンパン、フレンチ、コニャック、葉巻に最適化されていればそれでいい(笑)。