ゲスト投稿(?)【ワイングラスの科学その4】番外編

 とても多様性に富んだいとをかしぃお便りを頂戴したのでご紹介したい(ちょっと時間が経ってしまったが)。タンブラーからAmeba Owndに移ってゲスト投稿機能がなくなったので新しいスタイルで。

 原文全文は下部に引用添付したので、本文ではひときわいとをかしぃ部位(笑)をピックアップし掘り下げてみつつ、あまり欧米社会に詳しくない人達向けに補足も加えてみたい。

イギリスのワーキングクラスとは違うミドルクラス的な感じで使っていたような気もします。

 ミドルクラス=多分アメリカでよく使われる「中産階級」のことだろう。日本人は大半の人が自分を「中流」だと思っているが、アメリカで言う中産階級は、

1「プチブル」は、フランス語の「プチブルジョア」の略。それほど裕福でないのにブルジョアの意識をもつ階級の人。
2「中産階級」は、近代資本主義社会で、資本家階級と労働者階級との中間に位置する階層をいう。中小工業者、自作農、医師、弁護士、ホワイトカラーなどが含まれる。
---https://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/7907/meaning/m0u/

この層を指していることが多く、日本で言えば高給取り層。

 資本主義経済下では資本家(株主)が最上位なので、資本家階級ではないが勤め人の中では管理職・上級職クラスが中産階級。雇われ社長も含まれる。

 ※という前提で読み進めていただきたい。

その方は「アメリカでは、経済的に成功すると、みんな『出自はヨーロッパ貴族』になるからねぇ」と笑っておられました。

 マドンナもナイト(女性はデイムか)の称号が欲しくイギリスに移り住んだが、もらえないことがわかってかスペインに移住したという本当かどうかはワカラナイ話を想い出した(笑)。

 アメリカでは資本家階級まで行くと横並びになってしまうので、“格”を求めて貴族に憧れるのだろうと思う。

イギリス貴族とロシア貴族が話す場面がありましたが、二人は英語で話していて、夫は「この人たちは、絶対にフランス語で話さないとおかしいだろう」とぼやいていました。

 バレエもコース料理もイタリアで生まれ、フランスで洗練され、ロシアで完成するという欧州文化形成の“流れ”がある。昔のロシア貴族はフランスに移り住んだらしく、実際南フランスにはロシア人(の富裕層〜富豪)が非常に多い。

パリの一人当たり日本円で1万円から2万円のちょっとお洒落なカジュアルレストランでグラスワインを頼むとグラスのボウル部分に目盛がついていました。「注ぐのはここまで」とハッキリしますし、サービスする側もされる側も便利ですから、味気ないですが、小洒落た居酒屋さんでしたら合理的です。

 今回のメインディッシュ(笑)。

 日本で1万円から2万円という価格帯だと客側は高級店にいるつもりなので、目盛り付きグラスが出てきたらとんでもないクレームになるだろうが、パリだとまさしくオシャレなカジュアルレストラン。私は目盛り付きグラスを見かけなかったが、見ても全く驚かない。

 あるロシア人女性(旦那は富裕層)がパリでランチタイムに「シャンゼリゼサラダ」を食べた時の話をよく想い出す。当時のレートで日本円換算すると4,500円くらい。出てきたのは中国キャベツ(=はくさいのこと)にプレッツェル(ブッシュ大統領が喉に詰まらせたことでロシアでは有名(笑))を散らしただけの代物だったらしい(笑)。

 日本だと5スターホテルランチでも3,000円出せばもういいというくらい食べられる。

 加えてモナコで3万円のディナーならダイエットができる(ショートコースほどもない)と話していたことも想い出す(笑)。

 日本だと3万円のディナーは確実に太るという量が出てくる。

 ※もちろんいずれも飲み物代は含まない。

 パリのムーリスやフォーシーズンズは日本円で3.5万円以下のコースがなかった記憶だし、ハイアットやリッツ、バリエール・ル・フーケも大差なかった記憶。

 私がパリに行った時はシャンパンが高くて驚いた。グラスで7,000円くらい。

 多くの人は、日本は安くて美味しい(味付けは子供向けだが)ことを良いこととして捉えているが、飲食店のコストとは家賃と水道光熱費、食材費は削りようがないので、しわ寄せは全て人件費だということを忘れてはならない。「安くて美味しい」ということは、低賃金・重労働が確定しているということ。

 話はワイングラスの目盛り(笑)に戻ると、パリは世界有数の観光地だからということもあるだろうが、フランス自体にそういう合理性がある。北欧のように合理的なだけではなく、ロマンと合理性が混在している。

 フランスに旅行レベルの短期滞在をして帰ってきた人は大抵「日本の方がいい」とぶちまける。半年〜1年くらい滞在した人は「フランスも悪くない」と言い、数年住んだ人は「よくわからないがフランス人はなぜか上手くいく」と魅了されていることが多い。

 そりゃ長期滞在している時点でフランスが好きなんだから当然だろうという話なんだが、仕事してないようで日本人より一人当たりの生産性(GDP)が高いし、冗談ばっかり言っているようでいざというときはなぜかきっちり収まる(まとまる)不思議さがある。

 『OSS 117』はその全てを描いている(笑)。コードネームを牛の個体番号呼ばわりするシーンがイイ(笑)。

 というわけで以前書いたブログ、

を紹介しつつ、ヨーロッパのマナーや階級といった文化に興味を持った人には『ジェームズ・ボンドを夢見た男』(Fleming: The Man Who Would Be Bond)をおすすめしたい。

 秘書をレストランに連れ出す際、「海軍情報部では許されてもこの店では許されない」というイアン・フレミングのセリフがいとをかしぃ。観る前にコニャックと葉巻を用意していただきたい。

 おっと気がつけばこんな時間だ。

 皆さん良いお年を(笑)。


-------以下お便り原文-------

こんにちは。

一度、コロナウィルスとBCGワクチンの関係性のことでメールを送らせてもらったことがあります。

いつもブログを興味深く読ませてもらっています。

最近書かれていた「アメリカドラマの教養について」などが面白く、問い合わせではありませんが、少し書かせてもらいたいと思いました。

亡くなった夫は欧州生まれの欧州育ちのソフトウェアエンジニアで、欧州の一国とアメリカの国籍を持つ文字通りの「欧米人」でした。家族でサンフランシスコベイエリアに暮らしていましたが、夫の友人たちは、ほぼみんな二重国籍以上の「欧米人」です。

夫は自称ワーキングクラスです。イギリスのワーキングクラスとは違うミドルクラス的な感じで使っていたような気もします。それがどういった感覚なのか、わたしには今一つ感覚がわかりませんが、貴族でも準貴族でもないからだと思います。両親のどちらもが大卒で、親戚も大卒の専門職につく人が多く、自身も大卒の専門職(大手企業のソフトウェアエンジニア)ですので、アメリカでは自身も出身もミドルからアッパーミドルになるだと思います。自分がどの立ち位置にいるのかという自己認識は、イギリスに限らず、はっきりと欧州と米国は違うのかもしれません。

以前、アメリカに長くお住まいのノーベル賞受賞者が何人もいる有名大学の日本人教授と何度かお話しする機会がありましたが、その方は「アメリカでは、経済的に成功すると、みんな『出自はヨーロッパ貴族』になるからねぇ」と笑っておられました。1%:99%の運動以降は「たたきあげ」と言っておいた方が無難な傾向があるかもしれませんが。

話は戻りますが、アメリカのドラマで教養のあるとされる人物は、なぜかフランス語を話したがります。そして、100%と言っていいほど、文法が間違っています。よく夫と笑っていたのを思い出しました。

アメリカ人も登場するイギリスドラマ「ダウントン・アビー」がアメリカで大流行しました。「ダウントン・アビー」のなかで、イギリス貴族とロシア貴族が話す場面がありましたが、二人は英語で話していて、夫は「この人たちは、絶対にフランス語で話さないとおかしいだろう」とぼやいていました。このドラマの大成功で、イギリス上流階級の日常の立ち居振る舞いに興味を持つ人は増えたかもしれません。

ドラマから離れて、わたしの現実世界の周囲の「欧米人」のワインの持ち方は、時によっていろいろでした。ステムを持つこともあれば、ボウル部分を指で持つこともある。そういう人が多かったような気がします。

また、パリの一人当たり日本円で1万円から2万円のちょっとお洒落なカジュアルレストランでグラスワインを頼むとグラスのボウル部分に目盛がついていました。「注ぐのはここまで」とハッキリしますし、サービスする側もされる側も便利ですから、味気ないですが、小洒落た居酒屋さんでしたら合理的です。何軒かのレストランで見かけましたので、レストランでそのようなグラスを使うことも、そう珍しくないのかもしれません。

話は変わって、というか、繋がっているような気もしますが、イギリスに渡りたい移民は、もともとビザを持たないのではないでしょうか。そして、イスラム教徒もいるのかもしれません。フランスはイスラム教徒に厳しいですが、ロンドン市長はイスラム教徒です。ロンドンにイスラム教徒は数多いと思われます。

アメリカからヨーロッパに旅行するときにロンドンで乗り換えをするので数日過ごすことがありましたが、そこに定住していないものの目に、移民が働きやすそうなのは、断然、ロンドンです。

宗教的な問題や労働状況について見た感じから受ける印象で「あっちの方が住みやすそうだ」と思う人たちが多数いても不思議ではありません。

長々と書いてしまいました。

異文化に触れることは興味深いことです。そして、それを知っていくことはたのしいことだと思います。

これからも、ブログを楽しみにしています。

-------以上原文-------

※ご本人に掲載許可をもらい、掲載にあたって一部表現の変更依頼を経て掲載。