「日本の最低賃金を1500円に引き上げたら起こる「三つの悪いこと」 | 今週もナナメに考えた 鈴木貴博 | ダイヤモンド・オンライン」

 わかりやすくまとめられているのでおすすめしたい記事。

 「労働組合」というサウンドをあまり聞かなくなったのは、組合が戦って賃上げに成功することで機械化・自動化(すなわちリストラ)を加速させる可能性が高い時代になったから。

 シンプルに言えば、現代の企業は賃金を20%上げたら、その20%に相当する人員を減らす努力をするし、IT化によってそれが可能な時代。農業や工業が主流だった昔のように頭数を必要としなくなったので、本当に必要な人材だけを残せば良くなった。

 仮に皆の給与額が一律同じだったとして、直感的な収支では、20%の賃上げに対する増加分20%に相当する人員削減は現状維持に見えるが、頭数を減らせばその分“オーバーヘッド”も削減できる。例えば交通費とか制服支給費用とか。従業員1人当たりに必要とされる固定費が浮くので、企業会計としてはメリットが上回り、生産性や利益率という面から見ても“優良”化するので、リストラが更に進む。

 よって賃上げを承諾(成功)させることで、将来的に失業率を増加させる恐れがあることから、単純に賃上げ交渉に勝てば良い時代ではなくなったと言える。

 失業率が増加すると治安が悪くなるし、社会保障費が嵩む。すると高額納税者へのぶら下がり率が高まるため格差が拡大するどころか社会基盤が脆弱になる。

 現代社会は昔のように単純ではなく、例えば法人税率を下げて優良企業を誘致する方がむしろ税収が増え安定するという一見矛盾するケースに似ている。

 同じような例として、出産や子育てに支援が必要な低所得層を金銭的に支援し出産を促すと、将来的に支援が必要な人口を増やす可能性が高いことも似ている。とりあえず頭数が必要だった農業・工業時代と違って今は必ずしも働き口がなく、相対的貧困に陥らない給与を得るためには高い教育水準や知能を求められる時代だから、稼げない親の子供は稼げない(稼ぐための教育を受けられない)という構造にあり、ただ人口を増やせば良いわけではなくなった。

 昔の理論は全く通用しない時代。

 よって学問は学び直し(更新)が必要であり、更に未知の課題を説く力=流動性知能が問われる社会に生きている。我々は。ワクチンの接種順然り。