レーザープリンターに戻ってから生産性が上がった。

 数ヶ月前、10年間使ったインクジェットプリンタ2台がまとめて壊れ、12年前に買ったレーザープリンターに戻った。

 すると驚くほど生産性が上がった。

 何十枚、何百枚で構成される書類一式の印刷を待つ(かつ繰り返す)ような仕事ならレーザーの方が良い(速い)のは当然だが、私の場合一度に印刷する枚数はせいぜい2〜3枚。それを1時間に3〜4回行う程度なので、印刷速度そのものが直接作業効率を上げてくれるわけではない。

 ではなぜ生産性が驚くほど上がったか。

 ヒトの作業とは、どんなに万能型ウェクスラー156男(笑)がマルチタスクぶっても完全な並列処理ではなく、細かく時間を刻んでいくと結局のところシリアル処理。少しづつタイミングをズラして並行作業しているように見えるだけ。

 インクジェットは印刷が始まるまでのウォームアップに時間がかかるし、印刷速度も遅い。ボケッと待ってるのもアレだからその間に他の作業をする。一見仕事量が多く生産性が高く見える。

 しかし、インクジェットの印刷を待っている間に他の作業Bをこなしているように見えても、印刷が終わった時にはまだその作業Bをしていて、元の作業Aが主たる業務の場合、結局はプリンタの前で待ってた方が1日あたりの作業完了数は多かった(生産性が高かった)ということがよくある。

 要は待ち時間に余計なことをしてしまうことが問題。無駄なことをしているわけではないので「余計」に見えないだけで。

 レーザーの場合、起動も速く印刷も速いので、印刷ボタンを押してから完了まで数秒、十数秒しかなく、他のことをしようとしない。大人しくプリンタの前で待機するので、すぐに次の作業に取りかかる。その結果主たる作業Aの回転率が上がる。

 ヒトは物事をブロック単位で分解するので、「区切りの良いところまで」を何度もやってると、主たる作業Aの累計中断時間がそれなりに長くなる。計算の途中とか文章の書きかけ(しかも単語の途中とか)で手を止めて元の作業に戻ったりしないから。電話とか特に。

 この「単位」を見極めることで、作業を複数人で分担した方が(その分支払い給与は増えるが)生産性が高まるのか、或いは1人のマルチに高い給与を払って少数精鋭チームにする方が良いのかといった効率化と合理性の落とし所が見えてくる。

/*
 最適化の例として、ハードディスクはセクタ単位で記録するため、設定された1セクタあたりのバイト数に満たない小さなファイルを複数保存すると、1台あたりに記録できるファイル数が極端に少なくなることと似ている。

 動画など大きなファイルを保存することが多い人はセクタあたりのバイト数を大きく設定し、少ない文字情報(メールとか)を沢山保存する人はセクタあたりのバイト数を小さく設定した方が最適化される。
*/

 ということから、一見「この人に給与払うのもったいないよね」「他のこともさせようよ」と端から見えている仕事も、実はその方が他の誰かの仕事率を上げている可能性があるという視点も時には必要だと言える。

 例えばバンドのライブで、ギターソロの間ボーカルはヒマだから「その間オレが郵便出してくるよ」と気を利かせた場合(笑)、3回中2回はうまくいったとしても、何かあればギターソロが終わるまでに戻ってこれないので、最終的には品質(信用)を下げることになる。他のメンバーはボーカルが戻ってくるのか気が気でないので上の空になり凡ミスが増える。

 この「郵便を出しに行く仕事」というのが何とも無駄に見えて人員削減と共に効率化・スリム化を図っているのが現代版のリストラだが、自動化された工場や機械化された定型業務の何が素晴らしいのかというと、「決まった仕事以外しない」(その代わり自分の仕事は完璧にこなす)というところにその本質がある。軍隊も同じく。

 という視点で、昔から何でも1人でやる私は待ち時間で他のことをするかしないかを切り替えている。