10年予想。クレジットカード編。

 富裕層においてはデビットカード最強の時代になるんじゃなかろうか。

 クレジットカード会社は引き落とし日まで代金を立て替えている状態なので、消費者は一時的に借金をしている状態。だからカード会社は「本当に払えるのか」を見極めつつ与信枠(限度額)を設定・調整する。言い換えるとコストがかかり、景気が悪化するとビジネスのうま味がなくなる。

 どんなに長年事故歴なしで同じクレジットカードを使っている人でも、例えばエルメスのバーキンヒマラヤに偶然遭遇し、800万ちょっとをサクッと決済できる人はほとんどいないだろう。

 実績と信用がある人は、事前にカード会社に連絡しておけば決済できるかもしれない(一時的な増枠)。あるいはカード会社によるが事前入金(デポジット)しておくとか。しかしこれは煩わしい。いつ買い物するかなんて、本来カード会社にお伺いを立てる必要はないし、そもそもいつ何を欲しくなるかなんてワカラナイ。

 かといって800万円超もの現金を、いつ遭遇するかわからないバーキンヒマラヤのために持ち歩くのも危険。

 だからデビットカード最強。

という結論に至る。

 口座に現金が入っていれば、基本的にはいくらでも決済できるから。

 クレジットカード会社は、自己申告の年収をベースに、過去の支払い状況や余所のクレジットカード会社がCICなどに登録する利用額や与信枠、支払い状況を参照し、この(自己申告の)年収ならこのくらいが限度だろうという推定しかできない。

 仮に「昨日遺産相続して口座に10億円入ってます」という状況にあったとしても、本人が自発的に自己申告しない限りワカラナイし、聞いても信じないだろうから証明をする必要がある。

 しかし、本人にとってソレが事実なら、そもそも何でカード会社に証明しなきゃいけないんだよという話。教えること自体にリスクがある。

 その点において、銀行口座の中を覗けないクレジットカード会社は弱い

 一方デビットカードを発行する銀行は当該口座をいつでも覗くことができるし(ということは多くの場合毎月振り込まれる給与の支払い元と額も確認できるということ)、そもそも口座にお金が入ってない限りデビットカードは決済できないので、与信枠を設定するための情報収集も必要なければ、利用状況のモニタリングをする必要さえない。

 そこで、センチュリオンのようなカードブランドを築くことができるとすれば、もはや銀行発行デビットカードしかないだろうと私は考えている。

 昔のシティゴールドダイナースプレミアム(現プレスティア)は、過去3ヶ月の口座残高平均が5,000万円以上あればという条件だったが(シティバンクという銀行発行だからこそできたこと)、これがデビットカードなら、例えば800万円のヒマラヤを決済すれば、少なくとも今現在口座に800万円以上ある(あった)ことが確定するので、店舗または店員にとってはカードの色よりもより事実を知ることができる。

 銀行がプレミアム系デビットカードを発行し、昨年度の平均口座残高からカードの色が変わるのだとすれば、そのステータスを維持するためにも1つの口座に預金を集める見栄っ張りが多いだろうし、銀行側は富裕層の他行への口座流出の心配がなくなるというメリットがある。

 また、デビットカード利用分はCICなどに情報が載らないため(クレジットカードと違って一時借金ではないから)、他社に情報が渡らなくなる。それは銀行系デビットカードに囲い込まれてしまうと、クレジットカード会社はどこの誰がお金を持っている(使っている)のかを参照する手段がなくなることを意味する。納税額の公示もない時代だし。資産を調べようと思ってもせいぜい不動産などの所有情報くらい。

 だからプレミアム系デビットカードに囲い込んだ銀行が富裕層市場の勝者となる。

と予想。

 楽天銀行から早く抜けたくて(笑)、ソニー銀行に移行している最中だが、キャッシュカード兼タカシマヤプラチナデビットカードは非常に良い。次の時代の勝者だと言う程ではないにしても、その方向性を模索している感が伝わってくる。

 高島屋以外での買い物も2%のポイント付与。

 外商担当付きバージョンは、年間500万円(通常版は300万円)まで+1%のボーナスポイント付与対象となるので(すなわちその範囲内の人にとっては3%の付与率)、デパート内でもポイントが付かないハイブランドや、銀座シックスのようなプレステージカードでも3%しか付かないところで買い物するなら、これ1つ持っていれば良く、絶妙なバランス感覚を持っている。

 入会月の翌々月までに30万円以上決済すれば35,000ポイント付与される。その代わり当年はボーナスポイントがなくなるので、年会費相当の3万円まではサービスするよというスタンスっぽく、一般的な年会費ビジネスのモデルとはひと味違う。