「シャネル、21年の売上高は2兆円に迫る勢い 「今後も価格改定をする予定」 - WWDJAPAN」

 ハイブランド業界全体が好調に見えるが、その中でもシャネルは端から見ていて絶好調なのがわかる。勢いがあるので、私も用もなく立ち寄ることが増えた。

 日本人の価格戦略は値下げ一辺倒。昔から自信のなさ或いは自己肯定感の低さからくるのか、値下げしないと売れないという思い込みが強く、「競争力を高めるには?」と問えば「値下げする」、「売上を伸ばすには?」と問えば「値下げする」という意見しか出ない。値上げする時というのは、やむにやまれずお涙頂戴的な理由と原因(原油高とか)を列挙し「値上げについて理解を賜る」という姿勢なのに対し、欧州勢はブランドの価値が上がれば、原価がどうであれ当たり前に値上げする相場社会。

 そして高ければ高いほど「価値がある」「今買えば後に高くで売れる」という具合にますます売れる。ビットコイン上昇中の時に「飛び乗る」人が増える相場に似ている。

 日本人的な思考・思想で値上げしないのは「消費者の味方」に見える(演出される)かもしれないが、同時に従業員の給与も上がらない(値下げで利益率が下がる中上げられるはずがない)。むしろ時間の経過と共に物価上昇に対し相対的に給与は下がるから末端労働者の生活は逼迫する。価値が上がれば値上げしていかないと、給与を上げる財源がいつまでも大きくならない。

 20年くらい前だったか、最初にMKタクシーを見た時には驚いたというより呆れた。同じ料金で白い手袋に帽子を被ってまるでリムジンかのように運転手が手動でドアを開ける。それは「差別化をはかっている」というよりも、労働力の安売り。媚びビジネス。大衆迎合。3倍くらいの料金は当たり前にとっていい。

 結局のところ、何でもかんでも安くでやってしまうと、「この料金でこれができるって、この人の給料安いんだろうな」という印象与え、次第に誰も高いお金を払おうなんて気がなくなり、日本人の労働力の価値が下がる。悪循環。

 労働対価(報酬、給与)とは、労働者の労働価値と拘束時間に対する値付けなので、日本人は日本人を安く見積もっているということ。言い換えると敬意が足りない

//だから楽天の送料無料を強いる考え方も好きじゃない。同じ物を2個買うと、売値に暗黙的に乗せられている送料分で無駄に出費が増えるし双方にとって良くない。

 量産品を企業努力で価格を下げていくのはいいんだが、物価高に抵抗し価格を維持しようとしたり、競争のために価格を下げようとすると、最終的には「できるだけヒトを減らす」という方向に向かう。サービスや相場的価値に合わせて付加価値的に利益を上積みできるビジネスもないと、日本全体がただの自動販売機化してしまう。

 シャネル、ヴィトングループ、エルメス、ロレックスなどのスーパーブランドの経営手法は、日本人がいちばん勉強しなきゃいけない分野だと感じている。

 意外だがアメリカは日本と欧州の中間的な印象がある。価値が上がってもそこまで値上げするかというとそうではない。合理的なハイブリッド思考か。