バーキンを買ったと話したら。内側にいる第三者の視点。

 時々世間話をするハイブランドC.,V.,F.,B.,D.の女性スタッフと話をしている際に「最近(の目玉)は〜」と聞かれたので、「ここ数ヶ月エルメスに通い、人生初のバーキンを買った」と言ったところ、タイトルの通り内側(業界内)にいる第三者の視点が見てとれた。

 「いくら使ったら買えたのか」「何年かかったのか」が業界的にもイチバン興味のあるネタっぽく、1-2個目を見送り3個目で購入の話をしたところ、オモシロイことに5人とも「見送る人がいるなんて😱」「そんなに早く😱」の次に発したのは「やっぱりエルメスさん、ちゃんと見てらっしゃるんですねー。さすが」(*1)だった。

 当然にどこのブランド顧客にもバーキン欲しさにエルメスで沢山お金を使っている人がいて、「500-1,000万円使ってもまだ1回もバーキンもケリーも出てこない」という話ばかり聞くらしい。持ち物は増えていっているそうなので、買い物しているのは確かな様子。

 そこで(*1)の「ちゃんと見てる」発言が出てくるということは、行間を読めばそれらの人達は「エルメスはちゃんと見て出さない」と思われていることになる。

 率直に、何がそう思わせるのかと聞くと、言葉を選びながらも「そうですね〜。エルメスではない気が、何か違うかなって、正直なところ」「バーキンやケリーを持ってどこに行くんだろうと思ってしまいます」と返ってきた。

 ファッションや振る舞いなどから、持ってる姿、使っている姿がイメージできないらしい。

 スタッフらは普段から「どこに行った帰り」「これからどこでディナー」とか、何気ない会話から生活水準を推定している。

 この10年くらい、どこのブランドブティックも何でアンタがココにいるのという印象の客が多く、スタッフと話しているとその感覚が伝わってくる。「是非この人に当ブランドの製品を着て(持って)いただきたい」ではなく「客が欲しいというから売ってる」感が強い。

 パパ活客が増えたというのもあるだろう。住まいや生活水準などいろんなものがまだ追いついてないというか、昔ながらのハイブランド顧客像とは大きなズレがある。

 一部の人気商品を除き、余所のブランドは欲しい人に行き渡るだけの商品数を用意できるので客を選ばず売上増を選択するが、エルメスの場合はバッグの数が足りてないので、必然的に客を選んで出すしかない。

 余所のハイブランドスタッフから見て「自分だったらこの人には売らないな」という感覚が(*1)の「ちゃんと見てる」発言につながるのだとすれば、「“ホーム”を決め担当者を付けてその人から買い続ける」(*2)などの方法論ばかり先行している世間のエルメス必勝法(?)は初めから脱線している可能性が高い。

 客側に、スタッフから見て「売りたくない」「売るつもりはない」という印象がある限り、例え担当者が付いてもバッグは出てこないから。

 となるとまずは自分のオーラ作りが先。

 ヒトは上手く行かないと、「○○を実践している自分は大丈夫」と何かしら継続する正当性や根拠を求めるようになる。宗教みたいなもの。「毎日お祈りしてるから」とか、その世界で“正しい”と言われていることをやっていれば自分に非はないという「安心」と引き換える感じ。

 心が折れそうになると継続するための支え(方法論など)を必要とする気持ちはわかるんだが、ある決め事を実践すれば皆が同じように上手くいくわけじゃない。

 皆が毎日走ったからといって全員がオリンピックに出られるかというとそうじゃない。

 努力したから出場権が与えられるんじゃなくて、「4回転を飛んだから」とか「100メートルを9秒台で走ったから」という結果に対して権利が与えられる社会に生きている。

 誰もが80点とるテストで80点とっても平均点だから、偏差値化すれば50すなわち平凡でしかない。

 仮にバーキンの供給率がバーキンを欲しがる顧客数の2%だったとすると、その販売対象として選ばれるには偏差値70を超える(=出現率2%以下である)必要がある。

 顧客100人並んでそのうちの2人になれるか。

 世間で言われているような「エルパトのコツ」を見よう見まねでやってる時点で平均(50)またはそれ以下だから、残念ながら多分覚えてももらえない。

 と考えると、思いっきり洒落こいて(笑)行った方がイイ。どこのハイブランドブティックに行っても1回で覚えられるくらいの存在じゃないと厳しい。

 他方、「自分なんてまだまだ使った額が」「エルメスは年1,000万円から」とエルメス顧客層の底辺にいると謙遜する人達がいる。

 それも私は間違いの始まりだと思っている。

 バッグが出る出ないをお金の力(使った金額次第)だと思っている証だから。

 確かになかなかバッグが出てこない時の言い訳には「まだ始めたばかりだし」という意味で使えるが、1,000万円を超えた時点でまだバッグが出てこないと、他の言い訳を探さなきゃいけなくなるんじゃないか。

 というわけで、私は方法論よりもまずは自分磨きとキャラ作りからだと言いたい。

 「今突然出してもどうせカード切れないんじゃないか」感ゼロで。パパ活感ゼロで。

 フレンチでシャンパン飲んでる姿が似合う選手権(笑)上位感全開で。

 といっても世の中フレンチだけじゃない。「この後イタリアンレストランでディナー」という時にはフェンディやグッチ、ボッテガ、ロロピアーナ、ブルガリなどイタリアブランドの装いも良い。ベラヴィスタペルファボーレ的な。

 そういった日常会話、世間話の中から本質的な生活水準が漏れ出てくる。

 私が古典的な性格なのか、そもそも150万円もするバッグを買おうかという時って、もうその辺は既に出来上がっている状態だと思うんだが、他人に対して誰も何も言わない時代になったせいか、イマドキの人達は自分にその(価格の)バッグが似合うのか(客観的に見て)という視点が欠けている気がしてならない。

 昔のように「オマエにはまだ早い」とか「分不相応」とかイチイチ言われなくなった分、他人と自分の本質的な違い、相対的なポジションを認識してない人が多い印象がある。

 もしエルメス以外の行きつけハイブランドブティックがあれば、世間話ついでに「最近バーキン欲しいんですよねー」と言ってみると、スタッフの反応で他の顧客との相対評価を感じ取れるだろう。

 敏感な人ならだが(笑)。

 相対評価とは数値化すれば偏差値(ひいては相場観)そのものなので、「大変みたいですよー」と言われたらその他大勢と見なされているということであり、「○○さんならいけそー」的な反応ならまずますなんじゃないか。

 まずは自分自身から。