原油価格と円安。

 向こう数年の日本経済は原油価格次第と言ってもよさそうな為替相場(円安傾向)だが、市場の予想は180ドル/バレルといった声もある中、自分でもよくワカラナイがなぜか90ドルを切る予感。

 ※昔は「輸出に円安が有利」として歓迎されていたが、今は原油高が物価高に直結しているため、円安が不安視される傾向が高まっている。

 ただの嗅覚的な話なので、投資判断には使わないでいただきたい。

 原油価格は90ドルを切るどころか2022年の平均が80ドル付近となる水準をイメージしている。

 原油が50ドルを上回れば、アメリカはシェールオイルを増産する。以前は70ドル以上とされていたものが今では50ドル台でも採算が取れるらしく(いわゆる損益分岐点の話)、古典的な他国生産の原油より割安感がないと売れないので、原油価格が90ドルあたりに達すると、アメリカのシェールオイル生産が活性化する。

 アメリカは、シェールオイルを含めたら2017年以降、サウジアラビアやロシアを抜いて原油生産量トップかつ資源純輸出国であり、資源大国。天然ガスも同じく。

 昔から石油の話になると「アラブの大富豪」とか“利権”絡みの話をするのが好きな男性が多いが、既に規模感は大きく変わっていて、サウジアラビアの年間原油輸出額が約11.5兆円であるのに対し、アップル社の年間の純利益が約7兆円。

 ※いずれも2020年のドル建て数値を現行円レートで換算した。

 この数字を比べる際に注意が必要なのは、サウジアラビアは輸出総額であるのに対し、アップル社は純利益の数字。アップルの売上高は約33.7兆円。

 恐らくは純利益においてアップルが上回っているだろうことから、かつての原油最大輸出国よりも、一民間ハイテク企業の方がお金を生むという、超大国アメリカの大きさがみてとれる。

 昔からロシア人はロシアもアメリカと並ぶ超大国だと信じている人が多いので、私はアメリカの巨大さを説明する際に、ロシアの軍事費が約8兆円(2020年)、仮にアップル社が軍隊を持ったら同じくらいの規模になる(なれる)と話す。すると誰もが「桁を間違えてないか」という反応を示す。

 しかし事実。

 グーグル(アルファベット)も2020年、現行レートで約5兆円の利益を出している。

 アメリカが内向きになるのは当然。これだけ強いと他国に興味がなくなる。

 昔よく言われたように、原油の確保のために中東に介入して軍隊を派遣するという考え方も、今となってはそのコストと引き換えられる微々たるメリットを考えたら、GAFAに投資した方が安全で効率が良いという世界、かつ時代。

 これが現代の相場観。

 原油価格の話に戻ると、原油相場が上がればシェールオイルの需要が高まる。当然すぐには増産できないにしてもアメリカの潜在的な産出量を考えると、10年後くらいには「何かあったらG7の分は全部うちが提供するよ」となるかもしれない。

 ちなみに日本は2019年に約1.7億トンの原油を輸入しているが、アメリカの原油生産量は7億トン(2020年)

 ということから、少なくともアメリカ原油市場がパニック相場に陥る可能性は極めて低いため、一時的に高騰したとしても、年間通して80ドル付近に落ち着くんじゃないかと感じている。

 原油高よりも円安の方が日本の消費者に直結しやすい問題だと考えられる。