本当にギラギラの時代ではなくなったのか。

 女性はハイヒールにキラキラのミニワンピース。男はシルク入りのスーツにエナメルシューズ。

 ウェイティングバーでは食前酒、そしてシャンパンで乾杯し、食事には白・赤ワイン、チーズタイムにポートワイン。そしてバータイムにはコニャックとキューバ葉巻。

 日本も含め、かつて栄華を極めた先進国の華々しい夜の光景だが、世の中の空気的に「そんなのもう時代遅れ」感が漂う。

 私も年間の食費が1,000万円を超えるのが当たり前だった。ホステスクラブなどには一度も行ったことがなく、大規模なパーティーを開くわけでもなく、それ。

 今では葉巻を吸える店も限りなくゼロに近く、カマーバンドに蝶タイで行きたい店もない。5スターホテルも名ばかりで、どこか垢抜けないというかお洒落じゃない。そして色気がないので華やかなディナーが似合わない。

 家の方がよっぽどいい。常時最高の夜景もあるしカトラリーやグラスも遙かにイイ。だから出かけなくなる。そのおかげで感染リスクは低いんだが(笑)。

 日本の場合、サラリーマン層は物価上昇に賃金が追いついていない上、接待交際費もケチられ男性達は萎んだ。更には「男女平等(対等)」を盾に男性が女性にお金を使わなくなり、女性は一時期流行ったヘリや船のナイトクルーズ付きのセレブ体験ディナーからランチへ、ランチからアフタヌーティー(ヌン活)へと活動の場が移り変わり、同時にファッションも夜から昼向けのカジュアル路線へ変わった。

 確かにギラギラ感はなくなった。

 それが時代かというと実は違う。それは日本人が日本で見ている景色でしかない。

 つい最近あるデパートのお酒売場でシャンパンに購入本数制限がかけられていた。値札がないただの飾りボトルもあった。国産ウイスキーと違ってシャンパンの転売は聞いたことがなかったので、近くにいたスタッフに理由を尋ねてみると、中国やアメリカ市場での需要が急増しているため、日本への出荷割当量が減っているとのことだった。

 実際この7年程、ジュネーブに全くキューバ葉巻がなく、コイーバやトリニダッドなどの最上級ラインは滅多におめにかかれない。年間数百本を個人輸入していた時代が懐かしい。全て中国市場に流れているらしい。

 中国の人口は日本の11倍なので、所得上位10%をつまんだだけでも日本の全人口以上の人がいる

 すなわち、過去派手に見えた日本人の10倍以上の人達が今まさに飲めや食えやの大騒ぎをしているということであり、冒頭に書いたギラギラのきらびやかな世界とは、消滅に向かっているどころか日本の最盛期の10倍以上に増えていることを意味する。

 数で言えば今世界はギラギラ真っ最中。

 ヴィトングループがアルマンドブリニャックを手に入れたように、世界的なハイブランドは今盛り上がっている市場に注力するため、多くの日本人から見たら時代に逆行しているかのように見えることが多いだろう。ファッションでも「そんな格好する人いるのイマドキ」的な。

 が、結局のところソレは落ちぶれていく側から見える景色なだけで、これからインドが台頭してくことで豊かな人達は更に2倍に増える。

 ただでさえ閉鎖的な特性を持つ日本人はたまに外の世界を覗かないと流れを見誤ってしまいかねないところだが、円安と物価高で日本人はますます国内に閉じ込められている状態なので、3-5年後の国際競争力はまた一段と下がるだろう。

 10年くらい前にジャガーのディーラー担当者が、2000年初頭くらいまでは「アジアの港」と言えば真っ先に日本!だったのが最近じゃ中国ですよとボヤいていたのを想い出す。その分日本への到着が3ヶ月以上遅く、「最新車がアジアで最初に手に入る国」ではなくなったそう。

去年書いたが、各方面で日本の優先順位が著しく下がっていってる。

 葉巻に続いてシャンパンもかと思うと、ついセンチメンタルかつノスタルジックな気分になるが、皆が飲まないことと私が飲まないことは全く連動していないので、今のうちにシャンパン買い占めておこうかなとも思う(笑)。