バーキンは実質400〜700万円?

 以前書いたが、東京の転売ショップや中古屋・質屋(ブランドショップとかエルメス専門店とか名前はいろいろ)は欧米のエルメスファンから「バーキンやケリーの宝庫」と見られており、「東京に行ってよりどりみどりの中からバーキンを選ぶ!」という旅行プランをたてる人達がいる。

 それだけ転売が多い国ということでもあるんだが。日本は。

 結局のところ、オフィシャルブティック以外のものは全て転売か中古(未使用品含む)なので、過去の他人の涙ぐましいエルパトの成果。

 「海外で買い付け」なんてそれっぽいことを書いていても、エルメスは業者に卸さないので、海外ブティックで定価で買ってきた物を転売しているに過ぎない。「新品」はこのパターン。この2年パンデミックで海外に行けず、今は超円安なので転売業者は国内で調達するしかない。それで国内エルメスブティックは極度の品不足に陥っていると考えられる。

 これらのショップでバーキンは新品同様(いわゆる未使用品または新品の転売)のもので350万円〜で売られている。定価は約130万円(25cm)。

 定価の3倍もの金額出して買うのはバカバカしくないかという指摘に対し、「エルメスゲームに参加して、時間とお金を費やし、“塩対応”に心をすり減らし、それでも本当に欲しい物が手に入らない可能性があるくらいなら、東京に行ってさっさと自分の好きなバーキンを買った方が良い」と考える人達がいる。

 航空券・宿泊代を入れても450万円(バーキン350万円、旅費100万円)で買えるなら、事前に300〜500万円使わないとバーキンは出てこないと噂される「エルメスゲーム」に乗るより、時間と労力は確実に削減でき精神衛生上健全(?)であることから、時間コストの高い人(すなわち高給取り)にとってはこの考え方は一理ある。

 円安効果でこういった外国人の流入が増えるだろう。

 そこで「結局バーキンって実質400〜700万円ってことよね」(お布施代(笑)300〜500万円+バーキン代)という受け止め方が拡がってしまと、抱き合わせ販売の疑いが持たれてしまうので、エルメスにとってはブランドイメージに傷が付くのでマズい。

 その昔「バンドル商法」とも呼ばれた抱き合わせ販売はファミコン全盛期時代に横行した。本体が欲しければ売れないゲームソフト1-2本を買え的なやり方。マイクロソフトが最強だった頃、Windowsのラインセンス先にWEBブラウザやエクセルなどを強制的にバンドルさせたのも同じ。

 「本体だけ欲しいのに」という人達にとって余計な出費だし、本体を手に入れるための実質的な価格が上がってしまう(「定価」が崩壊する)。また、独占的な立場を利用して行うと、バンドルされる品の市場シェアも上がるため、更に市場支配が進むという問題がある。

 これに当てはめると、エルメスの場合はバーキンだけ欲しいのに(事前に)ダサい(笑)服飾品を買わされる=抱き合わせ販売だという主張はわからなくもない。

 実際、バーキンやケリーを手に入れるまでは毎日・毎週のように通い詰め「エルメス愛」を語った客も、手に入れた途端パタッと来なくなるというケースがほとんどだろうことから、バーキンやケリー以外のエルメス製品に魅力を感じている人達はそう多くない。

 当然にこの“お布施”が不要になったらエルメスの売上げも半減するだろう。

 「いいえ、その後もずっと買い物してるわ」という人達の中には、引き続きバーキンやケリーの色違い・サイズ違いなどが欲しいため、今後も「紹介していただく」ための関係維持費としてお金を落とし続けている人も多そうな印象がある。

 言い換えると、ブティックに行けばいつでも好きなバーキンを買えるようになったら、この“関係維持費”を支払わなくなるだろうことから、多くの場合本当に欲しいわけではないものを買っているということになる。

 すなわちこれらの出費はバーキン・ケリーのための「必要経費」としての性質を持って入る。

 富裕層とは、往々にしてこうした固定費が何かとかかるもんなので(ブラックカードの年会費や財産にかける保険料などが筆頭)、私はそれを特に不自然で非合理的なものとしては見なしていないが、カツカツのパトラー(?)にとっては、欲しい物さえ手に入れたら後足で砂をかけんばかりに捨て台詞でも残して立ち去りたい関係性だろう(笑)。

 ということから、バーキンを持って入る人=これまでエルメス製品を沢山買った人という前提であるために、何かしらイチイチエルメス(笑)という格好の人達が増え、バーキンを持つ層のファッションが固定化される=個性がなくなるという構図にある。

 Windows+MSオフィス以外の選択肢がないソレのように。

 それを本当に豊かな人達が好むわけではないので、以前書いた「使い分けてる感があった方がプラス(というよりそれが自然)」適正所得(?)の根拠でもある。

 私の感覚では、他のブランドとエルメス比は5:1くらいに抑えたい。金額もアイテム数も。

 「で、アンタはどうなのよ?」と聞かれたら、観察学習と心理プロファイリングを趣味とする私には、世界中が四苦八苦しているこのエルメスゲームが楽しい(笑)。元々スカーフを除いてエルメスに興味がなくスルーしてきたので、このゲームとブームがなかったら一生素通りしていた可能性が高い。

 現時点での手応えとしては、さすが世界的大人気のエルメスと感じている。シャネルやロレックスとは全く異なる世界観。昔から「売れっ子の気持ちは売れっ子にしかワカラナイ」のかなと感じているので、その視点で「エルメスの法則」が見えてきた気がしている。

 最近ようやく少しづつ買い物を始め、早くもバーキンについて「色やサイズはお決まりですか?」「いつまでに必要などありますか?」と聞かれた段階にある。購入金額は驚く程少ない。ココから3年かかったら遠慮無く指を指して笑っていただきたいが(笑)、私がやるからには最短コースを解明したい次第。

 希望は25cmで色はスケルトン、金具の色はシャネルのベージュゴールドと言った気がする(笑)。

 そもそも色見本などがオフィシャルサイトに載ってるわけでもないので、どんな選択肢があるか客が知ってるはずがないというスタンス。だから希望は?と聞かれたら、こんな感じと伝えるだけ。

 というわけで、次回以降エルメス商法は抱き合わせ販売なのか(笑)も含めて考察したい。

 ※先に書いておくと、抱き合わせ販売には該当しないという見解。