エルメスにおける転売リスク算定の考察。

 エルメス店舗側が客の転売の可能性(リスク)を算定する際、プロファイラーでもないスタッフに判断を委ねるよりは、リスクの高さに応じた評価値を設定し定量測定する方が負担がかからない。場合によっては購入履歴はブラックボックス関数化され、既にAI判定である可能性もある(転売注意ランプが点灯したり、バーキンゴーランプが点灯したり(笑))。

 という経営者・プログラマー目線で考えた上で、今度は転売業者目線でどのような品が転売しやすいか(言い換えるとエルメス側が警戒するか)を推定してみた。

 エルメスのバッグは確実に利益が出るため売りやすい。1:1説は転売対策だという見立て。

 転売市場価格を無視すれば食器も売りやすい。ただし輸送には難ありで通販型(メルカリ含む)転売業者にとって扱いづらい。

 一方、靴や服などはサイズがあるため、色違いは買えても、異なるサイズをいくつも買いづらい(「誰の?」という話になるから)ことから数さばきにくい。

 靴と服を比べた場合、靴の方が売りやすい。一度でもエルメスの靴を履いたことがある人は大凡サイズが確定するから。

 靴の裏張りをエルメスに頼んだ場合約3週間かかるが、中古化するため本人利用の可能性が高い。一方でオフィシャルの裏張りなら中古でもむしろ正規品感が増すため売りやすいかもしれない。

 服は実際に着てみないと、返品できない上に高額では買い手が躊躇しやすい。買いに来た本人が試着し、自分の体型に合わせて“直し”が入ると他人に売りづらい分、転売リスクは低い。

 ベルトはサイズがあるが靴よりも万人にフィットしやすく売りやすい。その場で自分に巻いてサイズを確かめ、エルメスに追加の穴開けをしてもらった場合「中古」化するものの、それでも穴1-2個ならまだ売りやすい。

 手袋はどこのブランドもそれほどサイズ感が違わないため売りやすいが、手のサイズはあまり変動するものではないので、サイズ違いは買いにくい(数さばきにくい)。

 マフラーやストール、ツイリーは売りやすい。

 ウマ飾り(ロデオ)は扱いやすく人気もあり売りやすい。

 時計、アクセサリー類などは売りやすい。人気があるかどうか別として。

 財布は誰でも使うので売りやすい。

 ということから、ざっくりだが、

 直し有りの服 < 直し無しの服 < 裏張り有りの靴 < 裏張りなしの靴 < 穴開け有りのベルト < 穴開けなしのベルト|手袋 < 食器|マフラー|スカーフ|ツイリー|時計|アクセサリー|財布< ロデオ < バッグ

 このような算定ができる。右に行けば行くほど転売しやすい(エルメスにとってはリスクが高い)。後は実際に本人が使っているかの目視。

 購入後に自分で使っていることを証明しやすいものとしにくいものがある。靴やベルト、服、アクセサリーなどは実際に着用してブティックに行き、買った際のスタッフに見せたら良い。一方、食器は本当に使っているか見せづらい。

 世間で「プレタ(ポルテ=服)を買うとバーキン紹介への近道」と考えられているのは、「服を買うと」ではなく、上記の通り転売リスクが低いのと、買った後の確認がしやすいからではないかというのが私の見解。

 また「メンズを買うとポイントが高い」という説もあるようだが、奥さんの購入実績に加勢するためにエルメスのメンズ製品を買う(買わされる)男性はいても、理由も無しにエルメスの地味なメンズ製品を自分から(ましてや転売市場で)欲しがる人は少ないため(笑)、転売しづらい=仕方なしに本人が使うしかないという前提がある(エルメスはわきまえている)と考えられる。

 すなわちどこまでいっても基準は転売防止の観点。

 再びプログラマー目線で推察するならば、ブランド品買い取り屋の買い取り価格が高い物=中古(転売)市場価格の高い物は転売リスク(及びカツカツエルパト組の換金率)が高いため、エルメス側はこれらの相場をモニタリングし定期的に変数入力することで、転売判定関数を効率的に機能させることができる。

 また、アマゾンなどに見られる「この商品を買った人はこんな商品も買ってます」を転用するならば、過去にバーキンやケリーの転売が判明した客の購入履歴を統計データ化することで、「過去の転売屋はこんな商品を買ってました」という具合に、購入商品の組み合わせから転売リスク判定をある程度自動化できる。既にスコアリングされているだろう。

 そこに販売員が実際に客を見て・喋って感じた感覚値を入力させ、値の重み付け(機械:販売員を1:nで調整)をすれば、よりヒューリスティックなアルゴリズムに仕上がる。

 仮にこの方式を採用した場合は、1人の担当者から何度も買い続けるよりも、より沢山の担当者から購入し多数のいいね!(笑)を獲得する方が評価が高くなる。必然的に。なぜなら1人の担当者のいいね!は癒着リスクと背中合わせだから。

 これを税務署や国税局(笑)に当てはめてみると、ある調査官が担当するA社の社長に対しいいね!と評価しても、実は賄賂と引き換えに見逃しているかもしれない。すなわちこの「いいね!」は自分(調査官)にとって都合がいいね!なのかもしれないリスクをはらんでいる。

 だから数年に1回異動させることで癒着を防ぎ、より多くの調査官によって客観的に対象経営者を評価する仕組みを構築する。

 私から見たエルメスはこの段階にあるように見える。バーキンやケリーの引きの強さは、取り扱える販売員や権限者が接待や賄賂漬けになるリスクが極めて高いから。

 その観点から言えば、世間で言われている「担当さんの成績になるから」という考え方はもしかすると間違っていて、バーキンを餌にお金を使わせることが簡単な環境下では、売上に対し一切インセンティブを与えていない可能性が高い。

 むしろペナルティだけが山積みかもしれず、それで客の見極め期間(及び1:n調整)を要しているんじゃないかというのが私の見立て。

 客だけでなく従業員に不正をさせない仕組みも世界レベルで熟れている感がある。