エルメス時間の“密度”の変化。

 時間の密度は常に変化しているという話。

 エルメスのある店舗において、枠有りバッグを出す対象客(購入額NNN万円/年以上などの基準をクリアした客)が3人いるとし、当該店舗に枠ありバッグが6個/年入荷するとする。

 この3人の対象客は、平均すれば半年に1回の来店で無事に枠ありバッグ2つを手にすることができる(見送らない場合)。

 するかしないかは別として、何なら店側は次の来店まで商品を取っておいても良い。他に対象客がいないんだから、そもそも売り切れることがない。遠方客であっても、次の来店を楽しみに待っていてくれるだろう。

 古き良き時代はそんな感じだったと思われる。今でも比較的所得の低い(対象客が少ない)エリアはそうかもしれない。

 しかし同じバッグの入荷数で対象客が6人いた場合、均等に行き渡れば1人1個づつだが、誰かが先に2個買えば1個も買えない客が出てくる。

 入荷数を増やせない場合、当然に倍率が高まっていくし、予めバッグが足りないことが確定しているので取り置きなんてナイ。要は店員は「顧客Xの次の来店はいつか」なんて気にしてられない。

 パンデミック以降の国内エルパトブームによってこれが加速し、バッグの入荷数に対して対象客が増えていく一方。

 すると半年に1回の来店で毎年2個買えていた客よりも、毎月来店する客が先に買ってしまう。

 もっと対象顧客が増えると、毎月来店客よりも毎週来店客、更には毎日来店客が当然にバッグに巡り会う可能性が高い。究極的にはバッグが入りそうな時間帯めがけて1日2回とか。

 今まさにこの状態にあると考えられる。特に東京23区は。

 ※スーパーフリーを出す余裕はなさそうなので、来店するだけじゃなく買い物をする前提。例え既に当該店舗の顧客であっても、何も買わずに「ありますか?」「はい、あります」はほとんどなさそうな気配。メゾンを除いて今現在は。

 ということから私個人のオススメとしては、年に1回大ドカン、半年に1回中ドカン、四半期に1回小ドカンという買い物の仕方よりも、小粒で良いから毎月または毎週買い物する方が良い。

と感じている。

 この25年ほどの都心部の人気タワーマンション(分譲新築)と同じで、昔は家なんてお金さえ出せば買えたものが、何億円の物件であっても抽選に当たらないと買えない時代になった。例え「キャッシュで払う」「前金でもいい」と言ってもダメ。エルメスやロレックスと同じく、中古でも値段が上がる物件はほとんどがそう。

 これをエルメスに当てはめると、バッグの数に対してバッグを出すべき対象客が多く、「抽選」にしない分先着順になっていると思われる。

 春夏、秋冬物を買いに年2回来店する対象顧客を想定しバッグを用意していれば良かった時代から、「このバッグ10分後にはナイと思います」という時代になった。

 よって「年間NNN万円」という購入額だけ見ていてもダメで、エルメス側の商品の売買サイクルも考慮する必要がある。

 すなわちエルメス時間の密度は常に変化していると言える。

 そこでエルメスとしては「年間NNN万円」の基準を上げる(≒対象客を減らす)というのも一般的に考えられる対策だが、賃金が上がっていない日本では採りづらい選択肢かなと思う。

 それでもあるデパートの外商員は(「顧客から聞いた話によると」という前置き付きで)「コロナ禍前は300万円/年くらいだったのが今は500万円/年くらい」と推定していたので、基準は上がっているのかもしれないが。

 ただコレも見方次第であり、年300万円買う客よりも年500万円の客の方が頻繁に店に足を運んでいるからバッグに遭遇する可能性が高いだけかもしれない。実際には金額の基準は変わってなくて。

 或いはエルパトブームで客入りが増えすぎて店員が客の顔を覚えられなくなり、よほどインパクトがない限り端末を見て「あー、前回あれ買った人か」みたいな状態になっている可能性もある。

 当然に次はいつ来るかわからない客のために、バッグの配分を考慮・調整したりはしない。

 ※個人的な見解だが遠方住所は不利かもしれない。

 その点においても、たまにしか来店しない客よりは、頻繁に何かしら買い物している客の方が印象に残りやすいので、十分にお金を使っているのに一向にバッグが出てこないという人は、これまでまとめて買っていたものを複数回に分けて買ってみるとイイんじゃないかと提案したい。

 そうなると言うまでもなく近場に住む人の方が有利となり、かれこれ20年ほど私は「最終的にはカードの色よりも住所」の重要性を説いている。

 いずれにせよ流れが早いので、1年以上経ったノウハウや考察は参考にならない気がしている。