「世界競争力ランキングで日本は35位と過去最低に、「凋落」に耳をふさぐ本当の深刻さ | 野口悠紀雄 新しい経済成長の経路を探る | ダイヤモンド・オンライン」

 この約30年の日本の低迷は、2000年以前の人口増によるいわゆる「人口ボーナス」で急成長したことを日本人の優秀さと民度の高さだと勘違いしたことで、戦後(≒昭和)のがむしゃらさが失われ、努力をしなくなったのが原因だと私は思っている。

 今では当たり前の考え方だが人口ボーナス期はどこも強い。中国もそうだし、今後日本を抜くと言われているインド及びインドネシアもそう。

 ブラジルも一時期注目されたが、治安の悪さがボトルネックとなった。

 今の日本は人口減で人口オーナス期。組織で言えばリストラの時。

 人口増の時は高齢者の数よりも労働人口が増えていくので将来不安もない。現役世代1人あたりの負担が減る一方だから。「ヒトは皆同じ」「努力は必ず報われる」とやる気が出るようなことを言っていればいい時代。

 それが現役層よりも高齢者の増加率が高まると、社会保障費を補うために必然的に増税へと向かうため、世の中が殺伐としてくる。

 「それ必要なの?」が増え、財源(税金)の取り合いとなり、あれもこれもカットされる時代。

 そして「1人あたりの生産性」に目がいくことから、自分がリストラされる前に他人の粗探しをし蹴落とすことばかりに頭を使う人達が増える。

 かといって、昔と違って「とりあえず産んで」とはいかなくなりつつある。能力の遺伝率(知能は大凡8割)が解明されればされるほど、経済的支援がなければ子供を生み育てられない人達に支援して産んでもらうと、将来的に経済的支援を必要とする人口を増やすことになるから。

 今は才能の時代。

 結果として格差は開く一方で、上位2-3%が税金の半分を納める時代となった。

 結局のところ、全体的な勘違いと平和ボケ(危機感のなさ)が今の日本をつくったといえる。

 ヒトは上手く行かなくなると誰かのせいにしたがるもんだが、私は政治や政策のせいだとは思っていない。これだけ恵まれた国でありながら、世界有数の自殺・売春大国であること(一般的自己肯定感が低いと見なされる)は日本人の本質的なものであり、誰かがそうし向けたわけじゃない。

 例えばサッカー日本代表が監督が替わったから優勝できるわけじゃないのと同じ。政策のせいにしてしまうと個々人の能力の問題を見落としてしまうし、その政治家を選んだのは誰なんだということになり主体性が失われてしまう。

 というわけで、起死回生を期待できるところは通り過ぎてしまったので、いかに綺麗に倒れるかという“受け身”の技術を磨くことが今の日本の最優先事項ではないかと個人的に思う。