ナイと言われたのにアルに変わるエルメス。

 最近、エルメスにハマってますというブランド好き女性と話した。

 エルメス店舗で在庫を確認し「ナイ」と言われ、しばらく経ってから(買い物の有無を問わず)スタッフが「もう一度確認してきますね」と言って裏に行き、戻ってきたら「アル」と言われる。

 何なのこれ。

と言う問いを参戦前からよく目にし現在に至るんだが、当該女性も「何なんですかねー、アレ」と探りを入れてきた。

 私にとっちゃ何も不思議じゃないし不自然でもない。

 本当に偶然入ってきた(検品が終わった)ということもゼロではないだろうし、元々あったとしても他のスタッフが抑えている場合もあり得る。

 ※以下符号化するのでワーキンメモリーの機能性が高くない人は苦手かもしれない。

 以前から○○というバッグを欲しいと言っていた顧客■■が来店中という場合、スタッフAAが○○を30分ロック。30分過ぎたら自動開放的な。

 データベースのトランザクション管理と同じ。

 ○○というデータ(バッグの在庫の値)を■■(顧客)が書き換える(購入する)可能性がある場合、システム(の手足となっているスタッフAA)は○○に対し排他ロックを行い、他者が読み書きできないようにする。

 データの不整合を防ぐため。

 これをエルメスの例の戻すと、スタッフAAが顧客■■に対し「○○が入ってきたのでご覧になりますか?」と話している最中にスタッフBBが顧客△△に○○を見せようと持ち出してしまうと大変なことになる。

 スタッフAA側でアルはずのものがナイになるから。

 よってスタッフAAは顧客■■にバッグ○○がアルと伝える前に、裏に行ってバッグ○○にロックをかける必要がある。

/*
飛行機の座席管理で言えば、座席ABを予約しようと手続きに入った時点でロックしないと他の人に割り込まれ、手続き中にABがアル→ナイに変わってしまう。一方でナイと思っていたら先客が時間内に予約手続きが完了せず開放されナイ→アルに変わることもある。
*/

 アナログな仕組みで再現するならば、バッグの前に(例えば)30分タイマーとスタッフの名札を置く。単純だが、タイマーが切れるまでの間、その名札のスタッフがこのバッグを抑えてますよということ。その後顧客にバッグの案内をする。

 他のスタッフCCがたまたまソレを見かけたら、「あと5分で切れるな」とか感覚でわかるので、まだ自分の顧客が店内にいる場合は「もう一度見てきますね」と言って裏に行き、タイマーが切れると同時に自分の名札を置いて再びタイマーをオンにする。

 それによってスタッフCCにはついさっきまで「ナイ」だったものが「アル」に変わる。

 1つの在庫を取り合う可能性はどこででもあり、「この商品は今ご案内中なので他のスタッフは触らないでね」ということ。

 そこで客に「今裏にありますが他で案内中なので」と言ってしまうと、狭い店舗なら誰が買ったかがわかってしまう可能性があり、防犯上「ナイ」ことにしたいという考えもあるだろう。ロレックスのようにわざわざ他の紙袋に入れて渡すようなケースも考えると、ナイで通した方が安全な時代。

 これを公開で行えば、銀座メゾン4Fのように案内中の客、順番待ちの2番手、3番手という目に見える形となる。

 ナイと言われたら客は帰るが、「順番待ち可」となれば残るので、店内スペースの余裕次第といったところじゃなかろうか。また客同士が揉めた時に即座にセキュリティが出動できる(待機している)か否かも重要かもしれない。加えてひったくり対策を考えると、4Fから外に出ようとすれば館内のどこかで取り押さえることができるが、デパート1Fの店舗とかだと走って逃げられたら人混みに紛れ捕まえられない可能性が高く、店舗環境も踏まえて方針を決定しているんじゃないかと推察する。

 ってカンジ。

 すなわち、古典的な物理的なバッグの在庫の存在に加えて、他のスタッフが案内中か否かという論理スイッチ的な「アル/ナイ」がある(はず)。

 参戦前から感じていることなんだが、エルメス業界では、世間ではごく普通にありうることが「エルメスあるある」としてあたかもエルメス特有の摩訶不思議なこととして語られることが多い。

 私にとっちゃそっちがエルメスあるある(笑)で不思議。全く異なるカテゴリの人達なんだろうなと感じる。

 トランザクション管理については『トランザクション管理とは|「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるIT用語辞典』がわかりやすいのでオススメしたい。