エルメスジャポンの基準は円建てかユーロ建てか。

 外資あるあるのテーマだが、エルメス日本法人の売上評価基準は円建てなのかユーロ建てなのか。

 私は全く情報を持っていない。

 円建てなら、例えば「イヤーズギフトは年間1,000万円以上購入した顧客に」と設定できるので単純。

 一方ユーロ建てだと為替に連動して変動する。

 わかりやすく切りの良い数字にすると、例えばイヤーズギフトの基準を世界一律で「10万ユーロ」と設定されていた場合、1ユーロ=170円の時なら1,700万円だが、1ユーロ=100円の時は1,000万円になる。

 枠バッグの基準も同じで、仮に「○○円購入したらバッグを出す」という暗黙の社内ルールがあった場合、それが円建てなのかユーロ建てなのか。

 コロナ禍で火が点いたエルメスブーム以降閾値が年々上がっているようだが、同時期からそれを上回る勢いで円安が進行しているので、影響を切り分けるのが難しい。

 パンデミックに入った2020年03月の時点で1ユーロ=120円だったものが、今年は170円前後で推移している。

 反対(海外)から見ると、1ユーロ=100円の時に「イヤーズギフトは年間1,000万円以上」と日本で設定された場合は10万ユーロだが、その基準が変わらないまま1ユーロ=170円の時に見ると「えっ、日本だと58,800ユーロでイヤーズギフトもらえるの?」となる。

 島国日本人の多くは「ココは日本なんだから日本円に決まってるでしょ」と考えがちだが、ユーロで経営しているフランス企業にとっては、ユーロ建てで基準を組まないと、通貨安の国に売りたくない理由が生じてしまう。

 具体的には「バーキンは8,600ユーロ」と決めた場合、1ユーロ=100円の時なら86万円だが、1ユーロ=170円の時は146万円になる。

 でこれを1ユーロ=100円の時に「日本の定価は86万円」と決めてしまうと、1ユーロ=170円の時には5,059ユーロにしかならないので、「日本に売りたくない」となってしまう。

 だから基本はユーロ建てで全て決定するものだと思うがエルメスジャポンはどうだろうか。

 では見方を変えて、8,600ユーロのバーキンを1ユーロ=170円で計算すると146万円だが、現在日本では174万円(=10,235ユーロ)で売られている。

 輸送コストが乗ってくるので仕方ない。

 が、今後は円高だろう見立てで考えると、1ユーロ120円まで円高が進行したとして、174万円で売れたバーキンは14,500ユーロにもなる。

 ユーロ圏の人に売ったら8,600ユーロ、日本で売れたら14,500ユーロ。

 そうなったらエルメス本社(フランス)としては日本で売りたいだろう。何もしなくても手に入るお金なので不労所得。

 それとも日本人が海外で買うようになることを嫌って(エルメスには“ホーム”の概念があり、他のブランドとは事情が異なるが)、為替調整の値下げをするだろうか。一般的にはハイブランドは上げたっきり下げない。

 だとすれば、円高に傾けば日本への出荷数が増える可能性がある。

 日本法人の利益率も上がるし、本国と利害が一致する。

 ということから、日本では年末(または来春)にかけてバーキン、ケリーの放出ラッシュを予想する(笑)。

 日本の定価が変わらないまま1ユーロ=140円を切った1ヶ月後以降あたりから。

 飽くまで何の情報もない中での勝手な推察なので、可能性の1つとして記憶の片隅に留めておいていただけたらと思う。