エルメスのジャストスペック枠バッグ戦略(?)

 今回の考察はこれまでのソレと異なり、特に信じるに値するデータが揃っているわけではなく、かなり嗅覚頼りな内容なので、軽く読み流していただきたい。


 私がエルメスに通い始めた2022年頃読んだブログ等では、枠バッグは「出会い」「ご縁」であり(終いには恋愛に例えられることさえあった)、希望通りのスペックが用意されることはなかなかないと書かれていた。

 言うまでもなくオーダー品を除いて。

 一般的にサイズ、革の色、革の素材、金具の色に対し好み(希望)をスタッフに伝えるところだが、全部指定すると当然に“出会う”確率が下がるのは自然法則通り。

 そこで何かしら妥協するというのが正攻法として浸透していたように思う。

 が、しかし。

 2023年以降、割と希望通りの枠バッグを手に入れた人が多いんじゃないか。感覚値でしかないが。

 もしそうだとすれば、それはなぜか。

 転売対策じゃなかろうか。

 というのが今回の考察。

 転売させないためにも、できるだけ希望に近いバッグを出すようにしているのかなという気がしている。

 ※ココでは業としての転売と個人の売却を区別しない。

 客の希望通りの物を提供したにも関わらず、客がそれを売却すれば転売目的の購入と断定でき、次から出さない理由になる。

 好きでもない物を出して(販売して)しまうと、(特に日本人は)「断れなくて」「せっかく出してもらったから」とあたかもスタッフに気を遣って「つい買ってしまった」ことにし、「でもやっぱり使わないし」「他にも欲しい人達いっぱいいるし」(だったら見送れという話だが)とか何だかんだ理由をつけて結局転売する(売却益を得る)人が多そうな印象がある。

 この場合、エルメス側も「売っちゃダメ」と言いづらい。「営業の仕方に問題があるんじゃないか」という話になると弱い立場だから。テレビショッピングですら(画面の向こうのキャスターに)「煽られて買ってしまった」というクレームが出るくらいだし。

 そもそも、客側もどんなにスタッフに気を遣ったとしても、まるまる損する170万円超のバッグを付き合いで買ったりはしないので、「出たらとりあえず買う」という人が多いのは、絶対に損しない(むしろ売れば利益が出る)というエルメス枠バッグの特異的な性質・価値によるものだと言える。

 それどころか、例え好みでなくても「無理矢理でも買わされたい」くらいの位置づけにあったんじゃないか。

 だからエルメスとしては“出会い”で枠バッグを出してしまうと、“言い訳転売”を増産してしまう可能性の高い構造下にあるため、顧客からの強い希望とそれに合うジャストスペックなバッグが用意できない限り出さないとする方が手堅いのかなと思う。

 希望通りのものであれば当然に良く使うため、スタッフも売ってないことを目視確認しやすい。

 ※希望スペックが他の顧客と重なりすぎると、生産・割当数量によっては年間2個買えないこもあるかもしれない。

 と考えると、いずれは注文生産制になる気がしなくもナイ。

 世間で言ういわゆる「実績」をポイント制度に置き換えると、一定額貯まったポイントを注文生産の権利と引き換える感じ。

 どうだろうか。

 私は指定が多く、初期に枠バッグを2回見送ったので、好み(希望)に関してかなり強い意志が伝わっていただろう点においても、当時の「あまり指定が多すぎると出会えない」とされていた世間のソレとは真逆のスタンスだったことになるが、結果として良かったんだろうと感じている。

 もちろん何の脈略もなく突然出てくるスーパーフリーや、キャンセル等で「今こんなのありますが、いかがですか?」的に出てくるいわゆる顧客フリーの枠バッグはまた別の話。

 当時は、ただ単にソレらを「出会い」と呼んでいた人達がブログ等で発信していただけという可能性もある。そうだとすれば、特にエルメスの販売方式が変わったんじゃなく、顧客ステータスによって見える世界が違うだけなのかもしれない。

 現時点では何かを確定できる程の情報を持ってない。

 というわけで嗅覚頼りな考察。

 ざっくり捉えるならば、エルメスとしては利用シーンが想像できない人にはイマイチ出しづらいのかなというところだが、例えるなら赤レンジャーは赤しか着ないから赤レンジャーなのであって、「全然青でも黄色でもいいですよ」と言われると赤を用意する必要性が薄れてしまい、青しか着ない、黄色しか着ない青レンジャー、黄レンジャーが先に専用着を獲得し、地位を不動のものにしそうじゃないかという感覚に似ている。